ゼレノドリスク工場は黒海艦隊向けにプロジェクト22160コルベットの3番艦を建造する

(FLOTPROMより)
 プロジェクト22160は領海の防衛・排他的経済水域のパトロール・密輸や海賊の取り締まり・海難事故被害者の捜索及び支援・環境モニタリングの為に設計いる。排水量1300トンという小型の艦船であるにも関わらず、プロジェクト22160は80人の乗組員が搭乗した状態で2ヶ月の自律行動が可能になっている。動力は2機のエンジンを組み合わせたCODAG方式で、発電能力は25000kWになる。CODAG方式では、経済速度で航行する場合は1機のディーゼルエンジンのみを稼働させ長い航続距離を実現させ、30ノットでの全力航行を行う場合はディーゼルエンジンに加えてガスタービンも同時に使用する。捜索能力拡充や捜索救難任務の為に、12トン級ヘリコプターを搭載することが出来る。標準的な武装としては巡航ミサイル"カリブル"を搭載する。
 プロジェクト22160の1番艦"ワシーリー・ビコフ"は2014年2月26日に起工された。2番艦は2014年7月25日に"ドミトリー・ロガチェフ"と命名された。3番艦は、ソ連海軍で最も栄誉ある艦長でもある大祖国戦争ソビエト連邦英雄パーヴェル・イヴァノヴィッチ・デルジャーヴィンの名を冠する。彼は大祖国戦争当時にドナウ小艦隊で旅団長を務めていた。
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(↑プロジェクト22160)
 プロジェクト22160はコルベット哨戒艦クラスの艦ですが、2ヶ月にも及ぶ長い行動期間を持ちその航続距離は約6000海里にも及びます。より大型のステレグシュチイ級の航続距離が3500海里で行動期間が15日でしかないのと比べると、長期間の作戦行動が可能であり十分に大洋ゾーン艦を名乗れることがわかります。一方でその排水量は1300トンでしかなく、搭載できる兵装やセンサーには限界が有るために決してより大型の艦船を置き換えることは出来ません。小型であるため大洋ゾーン艦と言ってもその行動には海面状況など一定の制限が掛かることも想像できます。遠距離に進出して長期間に渡り哨戒を中心にした多様な任務を遂行できるコルベットというのがプロジェクト22160の本質でしょう。
 プロジェクト22160は黒海艦隊と北方艦隊向けに12隻が建造予定です。当初は6隻の予定でしたが、大洋ゾーン艦が不足しているという理由で追加が決定されています合計6隻が2020年までに建造予定です。このクラスの艦に多様な装備を搭載することはコスト高を招くという理由から艦砲とヘリコプターに限定されていましたが、ISILに対してカリブルによる攻撃を実行した頃にプロジェクト22160にもカリブルを搭載することが決定されました。プロジェクト22160はモジュール構造でありカリブルの追加搭載も可能ですが、西側諸国では往々にしてモジュール転換の手間や乗組員の慣熟の都合からモジュールは装備したままあるいは外したままになる傾向があるようなので歓迎すべき決定でしょう。これによってプロジェクト22160は哨戒艦というクラスを超えた火力を手に入れることになります。
 ヘリコプターを搭載可能なことも本艦の価値を高めていることは言うまでもありません。例示されていた密輸のパトロールや捜索救難ではヘリコプターが効率を大きく改善します。12トン級という数字とCGからKa-27シリーズの搭載を想定しているようです。ロシア国防省発表ではKa-27PS搭載とのことです。