2011年のSLBM”ブラヴァー”試射総括

 先日12月23日に、18回目の試射をK-535”ユーリー・ドルゴルーキー”から行い成功させました。ロシアは2011年に4回のブラヴァー試射を行ったことになります。

 今年1回目(15回目):6月28日 (成功)
 今年2回目(16回目):8月27日 (成功)※最大射程をマーク
 今年3回目(17回目):10月28日 (成功)
 今年4回目(18回目):12月23日 (成功)

 今年の試射は、その全てがボレイ級(プロジェクト955)のK-535”ユーリー・ドルゴルーキー”が担当しました。去年の段階ではブラヴァー実験艦であったTK-208"ドミトリー・ドンスコイ”が担当していたため、ブラヴァーミサイルそのものが安定してきた年であったと言えます。試射全てを成功に導いたことによりボレイ級とブラヴァーの能力が証明されました。

(↑ボレイ級)
 中でも特筆すべきは今年2回目(16回目)の試射で、射程約8000kmとされていたブラヴァーの射程に対し、弾頭を最大約9300km先に投射する能力を持っていることを示しました。試射で弾頭をカムチャッカ半島にあるクラ射爆場を通り越して太平洋に到達させたのはこの1回のみです。

 この結果、ロシアはブラヴァーミサイルを制式採用することを決定しました。メドヴェージェフ大統領は12月27日の会議で、ブラヴァーがすべての試験を終えロシア海軍の要求する能力を満たしていることを認定し、制式採用を宣言しました。ロシアが全く新型のSLBMを取得するのは、ソ連時代にR-39を運用開始した1983年以来18〜19年ぶりとなります。制式採用されたため、19回目以降の試射は”訓練発射”として実施されることになります。また、ブラヴァー実験艦であったTK-208も既にその任を解かれていますが、水中音響兵装や音響センサーの試験プラットフォームに転用されます。

 ブラヴァーの沿革に関してはWikipediaここを参照してください。

【諸元】

ボレイ級 計画番号:プロジェクト955 全長:170m(ボレイAでは延長される) 全幅:13.5m 吃水:9.0m 推進:原子炉OK-650Bを二機・蒸気タービンを1機・ディーゼル発電機2基・モーター(4.1MW) 速力:水上15ノット・水中29ノット 最大潜行深度:380〜450m 連続作戦可能日数:100日 乗組員:107人(うち士官55名) 兵装:SLBMブラヴァー”16発(ボレイAでは20発) SS-N-16”ヴォドパト”対潜ミサイル及び魚雷(533mm魚雷発射管を6門)

ブラヴァー ミサイル名:R-30 システム名前:3M14Булава DoD番号:SS-NX-30 重量:36.8トン 全長:11.5m(弾頭含まず)・12.1m(キャニスター含む) 弾体直径:2m(ミサイル)・2.1m(キャニスター) 弾頭:10基(軍縮条約により6基に制限) 推進:固体燃料2段+液体燃料1段 射程:8000km(最大射程約9300km) 誘導:慣性航法及び天測。GLONASSにより弾頭現在位置測定誤差を修正