BSフジ プライムニュース「今次F-X選定」

 昨日の2000時〜2155時までBSフジのプライムニュースで「今次F-X選定」が取り上げられていました。進行役と解説員に加え「軍事評論家の類」(ゲスト)だとかが意見を述べつつ番組が進行して行く構成でした。まだ2/3程しか見てませんが。

 ある程度予想はしてましたが、番組初頭の「軍事評論家(?)のイチオシ戦闘機」はF-22/F-35一辺倒でした。ひとりだけF-35とF-15FXの併用を提案した方がいましたが、ユーロファイターを推した人はひとりもいませんでした。そもそも、番組時間の大半が第5世代ジェット戦闘機の解説に割かれていました。「軍事評論家」が推す理由は第5世代ジェット戦闘機は圧倒的な戦闘力を持っていると言う点。韓国などがF-35の導入を検討している事や中国のJ-XXなどを挙げ、これらの機体に対抗していくには第5世代ジェット戦闘機の導入が不可欠であると強調した。一方で、これまでの日本の航空産業が当時の最新鋭機のライセンス生産によって鍛えられてきたともして、大まかに言えば「F-35ライセンス生産に持ち込めたらいいな」という感じでしたね。第5世代ジェット戦闘機の購入の困難さ(F-22生産ラインの停止・F-22/35の調達費用の高騰など)や購入費用の捻出方法、ライセンス生産についての是非(どうあってもライセンス生産に持ち込むか、米が無理だと言うなら妥協するか)などについても話されていました。
(F-35B)
 最新鋭機であるF-22(の輸出型)やF-35を導入する意義が技術の取得であるならば、F-22/35単独での取得よりも、ユーロファイターと第5世代機の組み合わせでの購入がベストでしょう。ユーロファイターは各種技術移転の好条件が付いているようですし。小型にして高出力の戦闘機用エンジンの自力国産を目指すならおいしい話です。一方で、現時点での一般的な見解は「従来機の戦力<第5世代機の戦力」であるので第4.5世代機だけではなく第5世代機も保険として導入するわけです。現在F-35は価格が高騰してますし(輸出型が認められればですが)F-22もまた生産ラインを起こすとなると相当な価格になります。となると予算の面から今次F-Xで調達予定の機数全てを第5世代機にするのが無理な可能性も予想されます。そうなれば第4.5世代機との併用はなかなか有意義です。が、ユーロファイターとF-35の組み合わせになれば空自が運用する戦闘機は F-15J/DJ・F-2・ユーロファイター・F-35(F-22)」の4種になります。整備の面から考えればあまり誉められた話ではないでしょう。かと言ってF-15FXは基礎設計も古く早期に陳腐化する可能性もあります。困った話です。
(F-15SE)
 現在、日本を取り巻く環境はそこまで一触即発の状況ではありません。中国などの仮想敵もありますし向こうも日本を意識している面もあるでしょうが、そこまで緊迫しているわけではありません。一方でF-4EJ改は格闘戦となると絶望的ですが、さらなる近代化改装と補修を行えばまだ現役にとどまることが出来るのではないでしょうか(空自関係者でも何でも無いので、全くの的外れかもしれません)。もしそうなのであれば、F-4EJ改で暫くは我慢し実際のF-35の評判・能力・運用実績・運用状況・納入状況を確認してからF-35を導入することが出来ます。更にユーロファイターについても十分な余裕を持ってトランシェ3を導入出来ます。一度出したF-X計画を撤回するのは難しいかもしれませんが、"機種選定の継続"という形で続ければ手続き的にも行けるんじゃないでしょうか(役所仕事の方はわからん!)。
(ユーロファイター・タイフーン)
 イギリス防衛評価研究所(DERA)が発表した最新型「フランカー」(Su-30系列?あるいはSu-37?ロシア国内での名称はSu-30系列でも輸出名称がSu-35系列の機体もあったはず。)との模擬空戦の結果ではタイフーンの勝率は82%でF-22に次ぐ勝率を得ていたようです(信頼性:低)。またF-35は第5世代ジェット戦闘機なので「F-22ほどではなくても強い」、というのが定説ですが週刊新潮8月6日号はNATOユーロファイター・トーネード管理機構が認定するソフトウェアを使った模擬空戦でタイフーンはF-35に圧勝し、攻守を逆転させてもタイフーンは喪失率5%でF-35を90%以上撃墜したと報じています。F-35は今だ実戦配備されておらず、どのくらいの能力を持つのかは関係者以外には未知数です。このシュミレーションの結果もあくまでも「F-35の真の実力が分っていない状態での結果」でしかありません。また長距離(ミサイル射程で言えば中距離)でのAAMの射ち合いなのか、近距離での格闘戦なのか、シュミレーションの詳細が分からない以上この結果だけでF-35の能力を断定するのは危険です。一方で、F-35がステルス性を保った状態での空対空ミサイル携行数は4発です。対してタイフーンはより多くのAAMを携行出来ます。タイフーンがF-35を全く捕捉出来なければF-35に一方勝ちになりますが、お互いに捕捉してのミサイルの撃ち合いになればF-35は不利になります。

 F-22の輸出型は詳細も不明ならば実現されるかも全くの未知数ですが、ライセンス生産の可能性や電子機器の扱いなどを考えれば導入は避けるべきでしょう。F-22だけでなくF-35もですが、国産のAAMであるAAM-3/4/5への対応・必要なものに対して今までの日本のシステムに対応する電子機器への換装を可能にすること を認められなければ互換性の面から考えて導入を断念するか、こちらの主張を押し通すかのどちらかにすべきだと思います。


フリチョフ・ナンセン級

 突っ込みどころ満載だった件。
1.E-767戦略機 E-767は早期警戒管制機だよね。もしかしたらB-767旅客機の空耳かもしれないけど、前後の文脈からして多分無い。

2.ゲスト(民主党の誰か)「イージス艦も米国のオリジナルのものを日本だけが取得してるじゃないですか」 もちろん、解説員が訂正しましたが。解説員さん、キムチイージスだけじゃなくてスペインのアルバロ・デ・バサン級とかフリチョフ・ナンセン級も忘れないでおくれ。たとえSPY-1Fでもイージスはイージスだし。もっとも、「民主党の誰か」は「弾道ミサイル対処能力を持つイージス」をアメリカ以外で持ってるのは日本だけ、と言いたかったようですが。でもね、「民主党の誰か」さんよ。BMD能力が無いイージスを「なんちゃってイージス」なんて言わないで。イージス元来の目的は艦隊防空/空母護衛だから。

3.

残念ですがF-2は純国産では・・・・・・。

 後もなんかあったような気もするけど、どうせここは自己満足程度の意味しか持たないし。

 あ、空自には耐爆ハンガーの整備もがんばって欲しいです。