韓国国内では「PCC-772 天安」沈没原因として「北朝鮮関与論」が主流

 3月27日に全没した韓国の哨戒艦「PCC-772 天安」についての情報です。

 まず、韓国は12日に機関科員の居住区のあった艦尾部分を諸作業に便利な海域に移動させたようです。最終的な引き上げは今月末になる見通し。

 韓国政府は、艦尾部分は乗員が爆発音を聞いてから1〜2分で沈没したとしており、生存者は「外部からの衝撃のようだった」と証言していたとしました。事故当時、韓国地質資源研究院はTNT火薬換算で約260キロの爆発に相当する空中音波を観測したとのことで、「軍事専門家」は北朝鮮サンオ級潜水艦が装備する魚雷に匹敵する火薬量だとしています。韓国メディアは「北朝鮮関与論」を積極的に流し、国会でも北朝鮮の関与についての質問が与野党を問わずに絶えないそうです。

 一方で、「PCC-772 天安」のパッシブソナーは(潜水艦のキャビテーションについては分かりませんが)探信音を捉えておらず、また魚雷の探信音・高速スクリュー音も捉えていないとのことなので潜水艦雷撃説については信ぴょう性が今ひとつです。雷撃よりは触雷の方が可能性がありそうなものですが、パッシブソナーにも備わっている場合がある機雷を探知するための「キングフィッシャーモード」は、機雷大の大きさの物体のみに反応するモードなのでキングフィッシャーモードでは機雷しか見えません。なので常時使用出来るわけではありません。そして通常でも機雷が見えるとは限りません。内部爆発についても可能性は捨てがたいところです。生存者の証言は貴重ですが、結構曖昧なこともあるものです。結局、原因は不明といわざるを得ません。なお、韓国国防相の金泰栄は「すべての可能性を念頭に置いている」と繰り返し続けています。

 韓国政府は国際合同調査団の創設を各国に打診し、米英をはじめとする4カ国が既に応じているとのことです。もちろん、艦体を引き上げても原因が分からない可能性もあります。が、それはそれで仕方の無いことです。

 「PCC-772 天安」は浦項コルベットの「対潜型」と「対水上型」のうち「対潜型」に属しています。その天安が魚雷の高速スクリュー音すら捉えられないというのは論外ですし、まともな軍艦のパッシブソナーなら魚雷の推進音くらい聞きとることができます(でも韓国だしなぁ)。ただ、魚雷を感知したからといっても必ず回避出来るかといえば話は別ですが。魚雷はミサイルのように迎撃することは困難です(RBU-6000のような多連装ロケット爆雷発射機の配置によっては爆雷を連射して魚雷のセンサーを狂わしたり水圧で進路を変えることは出来るでしょうが、浦項級では爆雷の種類・配置上それができません)。