「PCC-772 天安」の後部は引き上げられた

 3月27日に全没した韓国のコルベット(哨戒艦)「PCC-772 天安」についての新情報です。

 韓国は「PCC-772 天安」の艦尾部分を15日に引き上げたようです。何らかの事態の進展が見込まれます・・・・。切断面は激しく損傷しているとのことで、内部からはこれまで「行方不明」とされてきた方々の遺体が出てきました。今後「PCC-772 天安」は中西部の平沢地区にある海軍基地に曳航され本格的な調査が行われます。

(↑この数週間、最も見たかった写真です。が、切断面はシートで覆われています)
 韓国国防省が言うには、行方不明になっていた乗組員44人のうち既に発見された35名の遺体の身元が確認できたとのことです。

 朝日新聞が韓国軍哨戒艦に艦長として乗り組んだ経歴を持つと紹介している金太俊・韓半島安保問題研究所長が言うには、引き上げられた艦尾部分の弾薬室やディーゼル機関室付近には損傷の跡がなく艦底にも傷が殆どないため内部爆発の可能性はほぼゼロになったそうです。さらに、切断面の形状が両舷が上にせり上がった「V字形」で下方から強い力が加わった可能性が分かり、所長は「魚雷による攻撃の跡ではないか」と述べています。

 哨戒艦とはいえ、韓国海軍のコルベットクラスの艦は何も浦項級だけではありません。東海級だって現役ですし、のりくんだのが浦項級でなければ(それほど大幅でないでしょうが)艦内の配置が異なっている可能性もあります。ついでに言っておくと、浦項級にはディーゼル機関の他にガスタービンも搭載しています。つまり、CODOG方式です。ガスタービンに異常があった可能性もなくはないですが、ディーゼル機関室とそんなに離れてるわけではありません。また切断面の形状が両舷にせり上がった「V字型」なのであれば、「切断面が滑らかな直線だった」という潜水員の証言は完全な誤認なのでしょうか?いくら視界が悪くとも魚雷攻撃の跡とも見れるような損傷を滑らかな直線に誤認するのでしょうか?かなり不透明です。が、切断面の詳しい画像が公開されればそれはわかることです。現代の魚雷は敵艦のキールの下、およそ水深12m程に潜りそこで爆発を起こすものが多いので魚雷攻撃を受けるとキールが破壊されいとも簡単に沈没してしまいます。魚雷攻撃であれば艦がすぐに沈没してしまったのもうなずけます。魚雷が魚雷艇から発射されたのであれ、潜水艦から発射されたのであれ、レーダーにもソーナーでも発見できない可能性は依然としてある程度の確率であります。特にパッシブソナーはデリケートで海水の状況によっても探知可能・不可能が左右されてしまいます。が、いくら海中の状況が悪くても現代のパッシブソナーで魚雷の高速スクリュー音を見逃す可能性は非常に低確率だと言わざるを得ません浦項級のソナーがデジタル化されていようがそうでなかろうが命中してしまうほど接近してきた魚雷を探知できないなどおかしすぎます。もし本当にそうなのであれば韓国海軍は終わっています。どこかがおかしいのです。切断面がおかしいか、韓国国防省の「ソナーには何も映らなかった」という趣旨の発表が嘘なのかのどちらかでしょう。そう思わざるを得ません。

 もっとも、海中で船体が変形してしまった可能性もあります。韓国政府は24日ごろに艦首も引き上げる予定とのことで、米英豪と共同で切断面に付着した物質や遺留品の調査を行うそうなので事態の進展が期待されます。

 なおマスコミは浦項級の事を「哨戒艦」と表現していますが浦項級の「PCC」はおそらくPatrol Coastal Crvette の略でしょう。日本語にすると「沿岸巡視艦」と言ったところでしょうか。通常は哨戒艦と言うと「OPV」、つまり”Offshore Patrol Vessel”です。日本語にすると「哨戒艦艇」でしょうか。似てるようで違うのかただ似てるようなのかややこしいところです。なので「哨戒艦」と言うよりも素直に「コルベット」と言った方が語弊が生じる可能性は少なくなると思います。一応報道に従って文章中に「哨戒艦」という記述をしてきましたがそれと同時に「コルベット」という表記も記してきました。どちらかに統一した方がいいのかなーとは思いますが、とりあえず両方記述していく方針です。あ、引き上げられた天安の写真を見たところRGM-84 ハープーンのキャニスターが見えたので天安はハープーンを搭載していたようです。