ロシア海軍黒海艦隊のウクライナ駐留延長の協定がロシア下院とウクライナ最高会議で批准された

 4月21日にメドベージェフとウクライナのヤヌコビッチ大統領はロシア海軍黒海艦隊の駐留延長に合意協定に署名していましたが、27日にロシア下院とウクライナ最高会議は駐留延長の協定を批准しました。これによりロシア海軍黒海艦隊の駐留は25年間延長され、西暦2042年までとなります。

 ウクライナ大統領ヤヌコビッチは駐留に合意したものの、黒海艦隊のウクライナ撤退を求める野党が激しく反発し27日には議事堂の周囲を与野党の支持者およそ7千人が取り囲んだそうです。そうなると議会も阿鼻叫喚の体を成してくるのが必然で、リトビン議長に生卵数十個が投げつけられた与野党の議員がプロレスごっこをやったり誰かが発炎筒を使ったり。発炎筒の煙が充満するなか”賛成多数”で可決され、ロシア海軍黒海艦隊の駐留を25年間延長する協定を批准しました。

(↑傘で議長を卵からガード。傘はこうもり傘かな?)
 ウクライナロシア海軍黒海艦隊の駐留延長の代価としてロシア産天然ガスを向こう10年間市場価格より3割ほど安く購入することができるようになります(千立方メートル当たり330ドル→220ドル)。以前は天然ガスをめぐって激しく対立していましたがとりあえずその点については解決したわけです。値下げの代わりに黒海艦隊駐留延長を求める・・・日本政府の面子とか鳩ポッポがロシア大統領なら官僚に進言されるまで黒海艦隊駐留期間延長を相手に要求するなんて考えつきそうにないね(まあメドベージェフがどうだったかは知らないけど)。現ウクライナ政権は親露的で、前政権はロシアとは激しく対立していました。

(↑ウクライナ議会議長にブッシュの靴よけスキルを求めるのは無理があったのか・・・と思いきや議長は傘と周りの傘持でしっかりガードされてますw)
 与党と野党の確執は常ですが、ウクライナの野党の言い分は「主権放棄」だそうで、さっきも書いた通り卵投げてみたり特設プロレス会場を作ってみたり自動車事故でも遭難してもないのに発炎筒を使用したりして議事進行を妨害したわけです。ちなみにウクライナ最高会議は一院制で定数は450名。今回は賛成が236票で可決されたので言うほど”賛成多数”ちゅうわけでも無いんですなこれが。ちなみにロシア下院は定数450で賛成は410票でした。これこそ賛成多数・圧倒的多数。ロシア上院も今日中に下院の決定を承認する見通しです。

 ロシア海軍黒海艦隊は1997年に締結された協定により2017年までウクライナクリミア半島の基地を使用することができました。しかし、04年に発足した親欧米派のユーシェンコ前政権はEUNATOへの接近を図り、それには黒海艦隊が邪魔だからさっさと出てけ!という主張を展開しました。旧東側諸国の盟主でありたいロシアは当然それはまかり通らん、というわけで、これが例の天然ガスを巡った争いなんかに反映されてきました。が、現政権は親露派で前政権のような激しい抵抗はせず、ロシアとの関係改善に努めました。ウクライナ潜の修理にロシアが協力するのもウクライナ政権が親露的になったことにも一因があるでしょう(リンク先のコメント欄がいろいろと凄まじいことになりつつあります。シア様の復帰を願う次第であります)。

 さて、各新聞社記事へのリンクを貼っておきます。
 朝日 毎日 産経

 ロシア海軍黒海艦隊の母港は現ウクライナ領のセヴァストーポリです。実地戦略演習ヴォストーク-2010に参加する巡洋艦モスクワもセヴァストーポリを母港としています。ヨーロッパ方面に展開可能な艦隊として北方艦隊と黒海艦隊をロシアは持ち、今後しばらくはその勢力を維持し続けると言うことになります。とはいえ、黒海艦隊は政治的な理由により微妙な立場に立たされることも間々ありますが・・・・。