19DDことDD-115”あきづき”が進水!

 ついに10月13日に進水式を迎えた新型汎用護衛艦(DD)”あきづき”。従来は19DDもしくは5000トン型護衛艦と呼ばれていた艦ですが、”あきづき”と命名されました。”あきづき”の名を冠する艦は帝国海軍から数えて3代目で、初代は大戦末期に建造された日本海軍唯一の防空駆逐艦と呼ばれる秋月型駆逐艦1番艦”あきづき”。2代目は1960年より就役を開始した初代”あきづき型護衛艦”の1番艦、DD-161”あきづき”。護衛艦(当時の呼称は警備艦)として初めて排水量2000tを超えた(2350t)艦で、対潜・対空・対艦兵装を搭載し艦隊旗艦としても使用できる汎用護衛艦でした。そして3代目が今回進水したDD-115”あきづき”です。(以下、DD-115”あきづき”を”あきづき”、DD-115”あきづき”をネームシップとするシリーズをあきづき型護衛艦と記載します。)

(↑19DD完成予想図)

(↑公式の命名式・進水式動画)
 あきづき型護衛艦の特徴は僚艦防空と呼ばれる能力です。従来ではDDG(ミサイル護衛艦)には艦隊防空任務が与えられ、射撃指揮装置や艦対空ミサイル(SAM)もそれに対応できるものを備えていました。一方でDD(汎用護衛艦)は、防空能力と言う点ではDDGに劣った装備で、個艦防空能力しか持ち合わせていませんでした。個艦防空はいわば自衛に徹するわけであり、自艦に向かって飛んできたミサイルや比較的近距離を通過する航空機に対する攻撃能力を持っている場合は”個艦防空を備えている”と言われます。一方で艦隊防空は言うまでもなく艦隊に対して防空の網を広げることが出来る能力を持つ場合に対して言われる訳で、長射程対空火器(普通は対空ミサイル)と強力なレーダー・射撃指揮装置を装備することによって艦隊に接近する(ミサイルや)航空機を撃墜することが出来ます。僚艦防空はこの二つの中間的な防空能力を持つと定義されています。詳しく言うと、「自艦以外に向かって飛翔する目標を処理することの出来るC4ISRシステム(情報処理システムおよびセンサーシステム)を持つこと」と「個艦防空ミサイルより長射程の艦対空ミサイルを搭載すること」です(ソース)。あきづき型の場合は、前者にFCS-3A、後者にESSMを装備します。

(↑試験中のESSM)
 FCS-3Aはひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)に搭載されていたFCS-3をベースにしたもので、多機能フェーズドアレイレーダーと射撃指揮装置から成ります。FCS-3に比べてレーダーの出力増加(3倍以上になったとか)とOYQ-11射撃指揮装置への横過目標(自艦以外に向かって飛翔する目標)と複数目標の処理能力の追加が行われています。因みに、FCS-3は射撃指揮装置3型とも呼ばれ、制式名称は00式射撃指揮装置。
 RIM-162 ESSMは”Evolved Sea Sparrow Missile”の略で、発展型シースパローと訳されます。終末誘導はRIM-7シースパローと同じくセミアクティブレーダーホーミングですが、中間誘導ではINS(慣性航法装置)とデータリンクによる自立誘導を利用出来るため、複数目標同時対処能力を持ちます。通常、防空艦の同時対処能力はイルミネーター(誘導電波照射装置)の数や射撃指揮装置の能力によって決定されますが、最近のESSM搭載艦は6目標は同時に対処できると見込まれているようです。

(↑トマホークを発射するタイコンデロガ級)
 あきづき型では僚艦防空能力は、”弾道ミサイル迎撃中のイージス艦の護衛・及びその際に手薄になる艦隊防空の補助・通常戦闘時における防空”に用いるということで要求されました。従来のDDが個艦防空能力しか持たなかったことを考えると画期的ですが、おそらく日本独自の要求であろう”弾道ミサイル迎撃中のイージス艦の護衛”については疑問が呈されることもあります。2006年6月22日にタイコンデロガ級イージス巡洋艦「シャイロー」がSM-3ブロックIAとSM-2を用いて模擬弾道弾1つと通常の模擬標的2つを同時に迎撃することに成功しているらしいです。この試験は同じくタイコンデロガ級の「レイク・エリー」でも行われ、成功しました(因みにレイク・エリーは初めてSM-3の試射を成功させた艦です)。つまり、弾道ミサイル迎撃中にイージス艦の防空能力が低下するというのは迷信だ、という主張が成り立つわけです。一方では、あの試験ではレーダー”SPY-1D”の出力を弾道弾捜索に必要な区域だけに集中させたことによって成功したのであり、やはり弾道ミサイル迎撃中は他目標への対処能力は低下するという意見もあります。いずれにせよ、護衛隊群の防空能力が強化されることに違いはありません(本当に弾道ミサイル迎撃中に他目標対処出来ないかどうかは実戦にならないとわからないでしょうし)。

(↑ステルス性を重視した艦の一例。フランス海軍駆逐艦D620「フォルバン」)

 他に、あきづき型護衛艦では従来艦よりもステルス性が高められてると言われます。確かに進水式の映像や完成予想図を見ると、ステルス性に配慮されていることがわかります(マスト・単装砲・艦上構造物・・・・etc)。また、対電波ステルス能力だけではなく、潜水艦のパッシブソナーに発見されにくいような低雑音性も追求されているでしょう。”プレーリー・マスカー遮音装置”や振動を抑えるゴム類を設置する、などの方法が挙げられます。ただ、内火艇や艦対艦誘導弾(SSM)のキャニスターが予想図ではむき出しで設置されている等、同世代の他の駆逐艦と比べて劣る点もあります。おそらく、これは予算低下が原因・・・・・

「そんな(むき出しの)装備で大丈夫か?」

イーノック大丈夫だ、問題ない。

 他の装備についてはたかなみ型むらさめ型とあまり変わることはありません(あきづき型は現在、たかなみ型の能力向上版と位置づけられています。たかなみ型むらさめ型の能力向上版です。なお、ESSMはむらさめ型たかなみ型でも装備可能なようにMk.48VLS Mod4などの対応VLSへの換装等を進めています。 )。ただ、中射程の対潜装備であるASROCはVLSに対応した従来の”VLA”から国産の07式垂直発射魚雷投射ロケットに変更されています。艦載砲はあたご型と同じMk 45 Mod 4 5インチ砲、近接防御火器も従来通りファランクスCIWS2基、SSMも国産のSSM-1Bです。

 個人的には”あきづき”の名前は意外でした。防空駆逐艦だった流れを組んでDDGに付けて欲しい名前だったのですが、平成5年まで旧あきづきが在籍していたので仕方ないのでしょう(´・ω・`)。なお、今後あきづき型は第5〜8護衛隊に1隻づつ編入し、全部で4隻建造される予定。