ミストラル級2隻(+2)をロシアが取得することに決定

 もう既にご存じの方も多いでしょうが、先日フランスの強襲揚陸艦ミストラル級2隻をロシアが取得し、さらに2隻を調達することが決定しました(flot.com)。

 国際入札の結果、ミストラル取得に関してはフランスの造船役務局とロシアの造船会社JSCから成る国際コンソーシアムが担当することになりました。まず、フランスが最初の2隻を建造しそののちにこの共同体がさらに2隻を建造し、最終的にロシアは合計4隻のミストラル級を保有するに至ります。ミストラル級の建造に、フランス側はアトランティーク造船所を、ロシア側はアドミラルティ造船所を使用することになっています。

 12月24日にメドヴェージェフ大統領がサルコジ大統領に電話で入札の結果を伝えました。メドヴェージェフ大統領およびサルコジ大統領はミストラル級売却問題に関して交渉過程を終えたことを歓迎しています。共同声明では、「このプロジェクトは両国の産業の発展と雇用問題の解消に役立つものであり、また防衛と安全保障を含むすべての分野で大規模なパートナーシップを発展するための礎と成るでしょう」と述べられています。

 ミストラル級購入に関しては形態や数について二転三転しましたが、今年3月〜4月には”最初の2隻をフランスで建造、残り2隻をロシアで建造”という半々(2隻購入、2隻ライセンス建造)に落ち着いています。ロシアはこの種の多目的に使用可能な強襲揚陸艦及びその技術の取得を望んでいますが、それぞれの造船所にも民間の仕事がある上にロシア海軍が必要としているのは揚陸艦だけではないので、最低必要な数をまず確保しそののちに技術移転を受けて自国で建造することにしたようです。一時は4隻全てがフランスからの購入になるのかと思われるような時期もありましたが。ロシア側で建造を担当するのはアドミラルティ造船所に決定されましたが、同造船所は揚陸艦の建造経験がありません。フランス海軍に就役しているミストラル級は全長199m、幅32mとのことなのでアドミラルティ造船所が二つ持っている屋根無しドック(全長259m、幅35m)が使用されることになるでしょう。ミストラル級は3つのブロックごとに製造し最終的に組み合わせるブロック工法で建造されていますが、先のアドミラルティ造船所にはこの経験がありません。言い換えるならばミストラル級の建造によってこれらの経験を得ることが出来るわけです(そのあたりの詳しい話はこのあたりで)。

 ロシアの最初のミストラル級は太平洋艦隊に配備され、既に保管艦に類別されているイワン・ロゴフ級揚陸艦二番艦”アレクサンドル・ニコラエフ”(と修理中のアリゲーター級)を代替する予定。太平洋艦隊にはかつてイワン・ロゴフ級2隻(1番艦”イワン・ロゴフ”及び2番艦)が配備されていましたが、既に1番艦は退役し2番艦も実働状態にありません。最近極東では日本のおおすみ輸送艦に加え韓国の独島級強襲揚陸艦や中国の崑崙山級(071型)ドック型揚陸艦など大型の揚陸艦が急速に多数整備されつつあり、ロシアにとってはあまり心穏やかな状態ではないでしょう。また、韓国の独島級同様ミストラル級も多目的に使用できる汎用艦です。今回の決定を受けてこのへんがギャンギャン騒いでますが、ロシアは太平洋艦隊に実働揚陸艦がロプーチャ級4隻しか無いのに周りの国々が大型の揚陸艦を次々に建造してるこの状況を見て”お前は何を言っているんだ”と。そりゃ気持ちはわかりますが、ロシア側からしたらこの措置は”当然の権利”ともされても仕方ないでしょう。