ロシア海軍の航空機は部隊再編により2011年末までに空軍へと移管される

 ロシア海軍参謀部の上位構成員は3月23日、2011年末までにロシア連邦海軍航空隊の戦闘機及び攻撃機は空軍へと移転されるだろうとRIAノーボスチに語った。(flot.com)

 「3月末までに戦略ロケット軍(RVSN)の航空機も同じように空軍に移転されます」情報源は語りました。「今年の終わりまでに、ロシア海軍の海軍航空部隊の航空機は、空軍に移管される必要べきです」彼は、まず遠距離爆撃機Tu-22M3、カムチャッカ半島のMiG-31迎撃戦闘機、Su-27制空戦闘機、そしてバルトの前線爆撃機Su-24が空軍へ移管されるべき機体だとしています。
 「例外はクリミア半島に配備されている黒海艦隊のSu-24です。」例外となるSu-24は恐らく部隊再編前の旧第43独立爆撃機航空連隊所属機ですが、1997年にロシア・ウクライナ間で締結された黒海艦隊に関する協定ではセヴァストーポリ周辺の港湾および飛行場をリースする相手があくまでもロシア「海軍」であることが原因だと思われます。つまり、これらのSu-24が空軍へ移管された時点でロシア海軍との縁が切れるのでロシア国内の基地へ移動させる必要が生じるのです。黒海艦隊の航空戦力を減少させないためには海軍所属にするしか有りません。
 flot.comの記事に戻ります。同時に彼は、艦上戦闘機Su-33・艦上練習機Su-25・対潜攻撃機IL-38/Be-12・海軍の輸送機は空軍に移管されるわけではないとと強調しました。また、第五世代艦上戦闘機はまだ契約されていないことも語りました。「近い将来艦上に配備される戦闘機はMiG-29Kになるでしょう」広報担当者は語りました。

 以前は”海軍の空軍”などと呼ばれていた海軍航空部隊は現在ミサイル爆撃機攻撃機・戦闘機・対潜哨戒機・捜索救助機・特殊航空機から構成されます。ミサイル爆撃機は地上・水上の敵性部隊や軍事および戦略的施設の攻撃、対潜哨戒機は敵潜水艦の捜索・追跡・破壊を、艦上戦闘機海上での広範囲な制空権獲得を、捜索救助機は災害時や航空機から脱出した乗員を支援することを、輸送機は空挺や物資・人員の輸送を目的に配備されています。


 途中でSu-24の配備の問題に関する解説を挟んだのでやや複雑になりましたが、部隊再編の一環として海軍航空機の空軍への移管が行われます。これに関しては以前に「★くろいあめ、あかいほし」さんが取り上げています。この再編は2010年に計画されたものです。改変後の部隊の様子(予定)は「ロシア・ソ連海軍報道・情報管理部機動六課」に書かれてあります。引用すると<---<ロシア海軍航空隊の保有機>
Su-33艦上戦闘機×19
Su-25UTG艦上練習機×9(?)
Su-24前線爆撃機×18
Su-24MR偵察機×4
Tu-142M対潜哨戒機×26
IL-38対潜哨戒機×26
Be-12対潜哨戒機×4
Ka-27対潜ヘリコプター×72
Ka-29強襲ヘリ/Ka-31警戒ヘリ×16
Mi-14輸送ヘリコプター×5
Mi-14対潜ヘリコプター×4
Mi-8輸送ヘリコプター×35
Mi-24攻撃ヘリコプター×20
An-24/An-26輸送機×25
An-12輸送機×16
Il-20電子戦機×2


【海軍総司令部直轄】

[第46独立練習連隊]オスタフェヴォ飛行場(モスクワ)
An-12、An-24、An-26、An-72

[第52航空基地]オストロフ飛行場(プスコフ)

[海軍航空隊指揮統制通信センター]ヤム(ドモジェドヴォ)


【太平洋艦隊海軍航空隊】

[第7061航空基地]カーメニ・ルチェイ飛行場(ソヴィエツカヤ・ガヴァニ)
旧第568独立混成航空連隊:Tu-142MZ、Tu-142MR

[第289対潜航空連隊]ニコラエフカ飛行場(沿海州)
Il-38、Ka-27

[第317独立混成航空連隊]エリゾヴォ飛行場
Il-38、Ka-27、Ka-29

[第175独立対潜ヘリコプター飛行隊]エリゾヴォ飛行場
Ka-27

[第71独立輸送飛行隊(旧第593独立輸送航空連隊)]クネヴィチ飛行場(アルテム)
An-12、An-24、An-26

[第123独立通信連隊]ウラジオストク


【北方艦隊海軍航空隊】

[ソ連邦英雄2度受賞ボリス・サフォーノフ名称記念第279艦上戦闘機航空連隊]セヴェロモルスク-3基地
Su-33、Su-25UTG

[第7051航空基地]キペロヴォ・フェドトヴォ(ヴォログダ)
旧第73独立対潜飛行隊:Tu-142MZ

[第7050航空基地] セヴェロモルスク-1基地
旧第403独立混成航空連隊:Il-38、An-26

[第35独立通信連隊]セヴェロモルスク-2基地


黒海艦隊海軍航空隊】

[第7058航空基地]グヴァルディスコイエ飛行場
旧第43独立爆撃機航空連隊:Su-24、Su-24MR

[第7057航空基地]カーチャ飛行場(セヴァストーポリ)
旧第917独立混成航空連隊:An-12、An-26、An-2、Be-12

[第859練習センター]エイスク
Mi-14PL、Ka-28、Ka-27PS(カーチャ飛行場から移動)

[独立通信大]カーチャ飛行場
旧第122独立通信連隊



【バルト艦隊海軍航空隊】

[第7054航空基地]チカロフスク飛行場
旧第125独立ヘリコプター飛行隊:Mi-24、Mi-8
旧第396独立対潜ヘリコプター飛行隊:Ka-27、Ka-29

[第7053航空基地]ハラブロヴォ飛行場
旧第398独立輸送機航空隊:An-24、An26、Mi-8、An-2、An12、Be-12(予備役)

[独立通信連隊]グヴァルデイスク基地

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 基地名の下が空白の場合は所属航空機無しと言う意味でしょう。合計で4個航空連隊分の航空機がロシア空軍へと移管されます。この改編でMiG-31・Su-27・Tu-22M3が海軍から消滅します。MiG-31・Su-27はご存知のとおり空軍向けの機体ですが、海軍へ移管されていたものです(空軍→海軍→空軍)。海軍が敢えて保持している必要の機体(Su-27・MiG-31・Tu-22等)を空軍へと移動させることで組織のスリム化と効率化を図ることが目的でしょう。
 海軍航空機の近代化としては、旧式のSu-24の後継にスホーイSu-34(海軍向け特別仕様はSu-32FN)を提案していますが採用されていません。また、老朽化したSu-33のあてがいぶちにMiG-29K/KUBが導入されます。MiG-29Kは今年までに1機が海軍へ納入される予定です。将来的にはPAK FAが主力艦上戦闘機になります。対潜哨戒機の近代化については現在音沙汰なしです。

 ところでカムチャッカのMiG-31といえばコイツらが「原潜デルタIIIを撃沈せよ」という本(上下巻に分かれています)に登場します。他にジェフ・エドワーズ氏の本については前にも書いたかもしれませんが「U307を雷撃せよ」という本(これまた上下巻)が有ります。どちらも読み物として面白いです。近代的な水中戦を「まともに」描いた作品は余り無いので。(まともじゃないのは沈黙の艦隊とかかなw)もちろんこの本も全てが全てにおいて正しいとは限りませんが「あり得ない神がかり的な」展開は有りません(例えば潜水艦が空を飛んでソナーを傷めずに艦首から着水するとか)。時間があるならおすすめの本です。