第4世代型攻撃型原潜(SSN)プロジェクト885(ヤーセン型)1番艦セヴェロドヴィンスクは5月7日に進水!(予定)の詳報

 昨日の記事に追記する形で詳報を伝えます。

 ついに、ロシアが起工した最新鋭攻撃型原潜プロジェクト885(ヤーセン型)の1番艦セヴェロドヴィンスクが今年5月7日に進水するようです。当初は「2004年、遅くても2007年までには竣工」とされており予定の遅延が目立っていますが、ようやく進水の目処がたったようです。本艦はセヴェロドヴィンスク市の工場「セヴマシュプレドプリャーチェ」で建造されていました。

「セヴェロドヴィンスク造船所は、戦勝65周年に当たり、祖国へ素晴らしいプレゼントを用意しました。5月7日、セヴマシュの船台で最新原子力潜水艦セヴェロドヴィンスクの進水記念式典が開催される予定です」と建造している造船所の代理人は語りました。粋ですね!彼によれば、すでに同艦はてのシステムの設置を完了し、絶縁・塗装中とのこと。ロシア海軍では資金難のため維持費を捻出出来無い原潜を退役させようとすることがありますが、原潜に自治体の名前が付けられている場合はその自治体が原潜と提携を結んで、資金を提供を受けたり短期兵役の水兵を優先的に回して貰うことがあります。セヴェロドヴィンスクでもセヴェロドヴィンスク市と同様の提携を結んでいますが、これまでは就役している艦と提携を結んでいたのに対し今回は海軍にまだ編入されていない艦と提携を結んでいる点が異なります。協定は2009年12月22日、セヴマシュ70周年を記念して結ばれました。セヴェロドヴィンスク市の市長ミハイル・グムーリンは「セヴェロドヴィンスクの名前は、ロシア海軍の最新鋭艦に付けるのに相応しいものです」と語りました。(ノーボスチの記事)

 セヴェロドヴィンスクはセルゲイ・ミチャーエフ大佐指揮のもと建造と試験が行われています。セヴェロドヴィンスクは今年中にロシア海軍に引渡される予定。

 ヤーセン型はソ連初の原潜K-3(プロジェクト627・ノヴェンバー型)から数えて第4世代目にあたる攻撃型原潜です。ロシア海軍はヤーセン型を「敵が沈められて初めて存在に気づく原潜である」と静粛性の高さを強調しています。セヴェロドヴィンスクはP-100や新型魚雷を装備し、対潜ミサイルは81R、86Rから91RE1へと完全以降される予定。従来の攻撃型原潜と巡航ミサイル原潜の役割を兼任する性格をもつ原潜と言え、それ故に「多用途攻撃型原潜」と呼ばれます。この点に関してアナトーリー・シュレモフ海軍中将は「この艦は、国家の広範囲目的の海軍力に課される全ての問題を解決し、水中および水上、そして陸上の異なる目標へ打撃を与える事が出来る」と述べています。
(K-3)
 ヤーセン型は1995年に実用化された第4世代加圧水型原子炉"KPM"を搭載します。この原子炉は1次冷却水系が原子炉と一体化されていて、1次冷却水は単一ブロック内で循環します。なので大直径の冷却パイプが不要となり、安全性も向上します。原子炉の寿命も船体とほぼ同じ25〜30年に達し、核燃料交換の手間を省くことが出来ます。魚雷発射管は片舷4門ずつ、両舷で8門を装備します。これとは別にセイル後方にVLSを8セル搭載するので、潜水艦の主力兵器である魚雷の搭載量を犠牲にすることなくミサイルを運用することが出来る。VLS1セルにミサイルを3本収納可能。これまでロシア潜水艦は艦首に魚雷発射管を設け、ソナーは魚雷発射管の下部に収まっていましたが、ヤーセン型ではソナーが大型化したためロシア潜水艦として初めて魚雷発射管を司令塔の下に設けました。米海軍のロサンゼルス級等が同等の手法を用いています。なお、核魚雷を用いずに米空母を素早く沈めることを主目的として従来のロシア原潜には650mm魚雷発射管が搭載されていましたが、改971型から搭載が見送られており、ヤーセン型でも非搭載となる。これは650mm管で運用されていた65-73型魚雷がクルスクの事故を引き起こし、運用が停止されたため。

 本級に搭載されるソナー"第4世代水中音響総合システムアヤクス"は北洋艦隊の667A(ヤンキー)型から改造されたヤンキーポッド型を利用して開発され、艦首の大型球状アレイと船体側面の平面アレイおよび曳航式ソナーから構成されます。探知距離は900kmに達すると言われ多目標同時分析・追尾機能を持ちます。スカト3を発展させたツカン航跡追尾装置を搭載し、同装置は3日前の航跡をも探知可能。他にも改メドヴェヂツァM型航法システム、モルニアMTS型自動通信システム、ツナミ衛星通信装置、ツィクロン衛星航法システム、改オムニブス総合戦闘指揮システムなどが搭載される。また、プロジェクト885ではスクリューのかわりに静粛性の高いポンプジェットを搭載し、巷では米シーウルフをも凌ぐ静粛性を持つと言われている。

 セヴェロドヴィンスクの排水量は8600(水上)/13800(水中)トン、寸法は119×13.5х9.4メートル、最大潜航深度600メートル、速力は16(水上)/31(水中)ノット、乗組員は90名(士官32名)、魚雷は30本を搭載しこれとは別に巡航ミサイルを24本搭載でき、連続航海日数は100日。

 ロシア・ソ連海軍報道・情報管理部機動六課