ウクライナは中国向けにポモルニク型ホバークラフト揚陸艇を2隻建造する

 一応気づいていましたが、見逃していたニュースです。ウクライナは中国向けにポモルニク型ホバー揚陸艇(12322型エアクッション小型揚陸艦"ズーブル")を2隻建造するようです。

 flot.com英語版の記事によれば、2隻は今年9月に起工されるとのことです。2009年7月2日にウクライナ国営企業Ukrspetsexportは中国国防省とポモルニク2隻の建造とポモルニク2隻に関する技術的文書を提供するという契約を締結していました。今回の建造はそれに沿ったもので、そうならば至極当然”技術的文書”も中国に渡ることに成るでしょう。由々しき問題です。flot.comの文章にもあるとおり、中国はポモルニク型(もっと言えばホバー揚陸艇)を建造できるようになります。2隻を建造して送り出すには5年ほどかかるようですが、中国の揚陸手段を大きく広げることになります。お値段は総額240万ドル。


 2隻の建造を担うウクライナのJSC More造船所は財政がかなり逼迫して倒産の2文字がちらついていたようなのでこれで大助かりなのですが、日本、台湾(、まあ韓国も?)にとっては困った話です。特に台湾。問題のポモルニク型ホバー揚陸艇の航続距離は55ノットで540km程。中国海軍東海艦隊の本拠地”寧波”中心部から台湾の”台北”までは直線距離で約540km(Google Earth使用)弱。辛うじて航続距離に入ります。実際の母港は市街地にはありませんし、陸地に沿って海上を行くことになるので要する距離は伸びるでしょうが、恐らく速度を落とすことで対応できる範囲内でしょう。海上給油が出来れば航続距離を延伸できます(そのかわりホバー揚陸艇最大の魅力”速度”が若干犠牲になります)。つまり、それだけ台湾へ力を伸ばすのが容易になった、あるいは手段が増えたと見ることが出来ます。・・・・また沖縄の米海兵隊問題で一悶着起こりそう。人民解放軍台湾襲撃の一報で海兵隊が出撃するとすれば、その出撃と移動速度と到着は早ければ(速ければ)早いほど(速いほど)海兵隊に有利です。となれば、現行のヘリよりも速くそしてより航続距離の長いV-22 オスプレイが重要になってきます。オスプレイは垂直離着陸できますが滑走したほうが燃費的に有利です。なので海兵隊はそれをやらせようとしてます。滑走するためには普天間基地ではサイズ不足で・・・・と、成るわけですな。


 一方で、韓国のソウルから寧波中心部の距離は約995km。ポモルニクの航続距離の2倍ほど有るわけですが、機動性の高いホバー揚陸艇ですし寧波から律儀に発進させる義理も理由もごいざいません。中国が韓国とやるのか-----朝鮮半島は緊張しつつありますが、両国が交戦することにまで発展するかはまだわかりません。ですが、今よりも効率的な手段を手に入れたとだけは言うことが出来ます。


 で、日本はというと、寧波〜対馬が約760kmです。中途半端な距離ですが、油断できるほどではありません。対馬でこれですから、尖閣諸島へ上陸を敢行することが距離的には容易であることは言うまでもありません。技術的文書が中国に渡るということはポモルニクのコピーだけでなくLCACの様な”母艦発進型ホバー揚陸艇”についても警戒する必要が出てくるでしょう。つまり、強襲揚陸艦です。中国は崑崙山型なんかを建造して揚陸戦力の充実を図ってますしね・・・・一昔前まで中国は「一度に1つの師団しか(揚陸に)動かせない」などと言われたりしてきました。しかし、大型かつ高速である程度の火力を有するポモルニクと揚陸艦に搭載できる本格的なホバー揚陸艇の取得は中国揚陸戦力の決定打につながるかもしれません・・・・。