今年のブラヴァー試射は6月から行われる

 2011年のブラヴァー試射は通常通り6月頃から行われるようです(RIAノーボスチ)。

 3月16日、「今年最初のブラヴァー打ち上げ実験は6月からになるでしょう」ブラヴァー設計主任のユーリー・ソロモノフは語りました。「氷が溶けた後、試射を再開します」 彼は試射がどの潜水艦から行われるのかを明らかにしていない。ソロモノフは「試射の全てをドミトリー・ドンスコイに依存する」事に対して懸念を表した。
 ブラヴァーは長期的なロシアの海洋核戦略の基礎となるべき大陸間弾道ミサイルであり、搭載する潜水艦は既に完成しています。現在までにミサイルは14回の試射のうち7回が失敗している。
 2011年に4〜5回の試射を行うことが計画されている。そしてそれらが成功した場合は2011年中に海軍に採用される可能性がある。

 今年も平年通り白海で試射を行うようです。そして、めげずに根気よく改良を続けてきた甲斐が出てきたというものでしょう。1・2段目の固体燃料エンジンに苦しみ、うまく行ったと思ったら3段目の液体燃料エンジンで異常があり”UFO”に勘違いされて大騒ぎになるなど艱難辛苦の道を歩み、諦めようにも代わりがおらず、多額の費用を注ぎこみ、ついにこの段階までこぎつけました。既に1〜3段目のエンジンも一定の稼働率を示し、信頼性を高めつつ有ります。
 ミサイルはボレイ級戦略原潜(プロジェクト955)に16基、2番艦アレクサンドル・ネフスキー以降(改ボレイ級/プロジェクト955A)では20基搭載される。試射ではタイフーン級1番艦を改造したTK-208「ドミトリー・ドンスコイ」で行われており、たまにユーリー・ドルゴルーキー(ボレイ級1番艦)から発射されるという状況。ゆえに「試射がどの潜水艦から行われるのか」はまだ決定されていない。ただ、制式採用にむけて今年はユーリー・ドルゴルーキーからの試射が増えるはず。

(↑ユーリー・ドルゴルーキー)
 3М14”ブラヴァー”は予算節約のため開発を中止したR-39UTTkh”バルク”ミサイルの代替として陸上発射型ICBMRT-2PM2”トーポリM”を潜水艦用に改造して作られました。トーポリMと同じモスクワ熱技術研究所が設計を行っています。現在ロシア海軍が運用する水中発射型大陸間弾道ミサイルはR-29とその改型”シネーワ”のみであり、それらについても搭載するデルタ級戦略原潜の発射筒の物理的制限から大幅な改造は困難です。また、R-29改”シネーワ”が登場した時点で既にボレイ級は着工されており、液体燃料ロケットを使用する大型で重いシネーワをボレイ級のサイロに収めることは不可能でした。一方でボレイ級のサイロを改造するにはさらに費用がかかり、近代化の余地が残されているとは言えバルク/ブラヴァーよりも2世代前のミサイルにそれほどの費用をかけるよりもブラヴァーミサイル開発続行ことをロシアは選びました。

(↑K-208(当時))
 ブラヴァーは1・2段目が固体燃料ロケット、3段目は液体燃料ロケットを使用するという珍しい構成です。これは再突入体に高い機動性を与えるための措置であり、液体燃料エンジンへこだわり続けたソ連/ロシアが未だに固体燃料ロケットの分野において遅れをとっていることを示します。とは言え、ヤンキーII型ただ一隻のみに搭載されあまり性能が振るわなかったR-31、タイフーン級に搭載された固体燃料エンジンを使用するR-39と比べると大きく進歩しています。R-39ミサイルは同じく三段式で全てが固体燃料エンジンを使用しますが、デルタ級に搭載できないほどにまで巨大化したので、三段目に液体燃料エンジンを使用するものの固体燃料ロケットを搭載しつつ小型化に成功した点は評価できるでしょう。

【主要目】名称:R-30/3M30≪Булава≫(国際協定使用呼称:RSM-56、NATO分類呼称:SS-NX-30) 最大射程:約8,000km 発射重量:36.8t ペイロード搭載量:1.15t(核弾頭を6〜10発搭載可能) 全長:(コンテナからの射出時で)12.1m 弾頭部を除いた長さ:11.5m