ロシア宇宙軍は2011年12月までに”設立”される

 航空宇宙防衛軍団としてのロシア宇宙軍が2011年12月までに設立されると宇宙軍公式代表者のアレクセイ・ゾロティン(Alexey Zolotuhin)大佐が語りました。形式的な”設立”ではなく部隊も同時に設立される”身のある”設立のようです。(イタルタス通信)

 2010年にロシア連邦の大統領は2011年12月までに、既存の防空システム・対ミサイル防衛弾道ミサイル防衛・宇宙コントロールを一元管理する組織として宇宙軍を設立することを決定したことをゾロティンは思い起こさせた。
 「現在、宇宙軍の基本資料として纏めらているものは国防大臣及び国防部参謀本部に提出されます」彼は語りました。「宇宙軍の新しいロケットについて言えば、プレセツク宇宙基地で飛翔実験が開始されるロケット複合体”アンガラ”シリーズが新たな輸送ロケットとして計画されています。(シリーズで最も簡易な)アンガラ1は2013年3月までに開発が完了すると見込まれています。」2010年には宇宙船”ソユーズ2”の「近代化ステージ10」が完了したことにもゾロティンは注意を促した。「現在、これらのロケットを通常任務に使用できるように作業しています。ソユーズ2の飛翔試験、さらには近代化ステージ11が本年度中に終わるよう計画されています。また、本年度中に簡単な輸送ロケットであるソユーズ1の飛翔実験が開始されます。」彼は語りました。「ソユーズ1が飛行実験段階から就役までには5年はかかるでしょう」そして、これらのロケットはプレセツク宇宙基地で運用されることに成ります。

(↑アンガラのコアロケット)
 ”宇宙軍”と聞くとどうしても「SF的な何か」や「戦略ミサイル防衛計画的な何か」(これもスターウォーズ計画だからSF的といえばそうか)を想像してしまいますが、ロシアの設立するものはそんな大層なものではなく「宇宙開発の一元管理化」を行うという色が強いものです。”設立”と言っても既存の宇宙軍の組織を改組するわけですが。
 ソ連時代は国内でロケットを生産していたものの、ソ連崩壊後は領土が分割されたため主力ロケットの一つである”ゼニット”生産工場がウクライナ領になり、ロシアはウクライナからロケットを購入しなければなりませんでした。アンガラロケットはゼニットを代替する形となり、ロシアはウクライナにロケットを依存するリスクを低減させることが出来ます。また、アンガラの射場をこれまでのバイコヌール宇宙基地(カザフスタン)ではなくロシア国内のプレセツク宇宙基地(他、現在建設中のボストチヌイ宇宙基地)に変更することでより一層のリスク低減を測っています。他国に依存せずに独自のシステムで打ち上げを行うことは安全保障上有利になることや技術発展に置いても役立つのはもちろんです。

(↑アンガラの初段燃焼試験)
 アンガラロケットはその輸送能力に合わせて1.1〜5まであり、2.0t〜28.5tのペイロードを輸送可能。これらはシステム式になっており柔軟性に富む構成になっています。シリーズ大半は無人機ですが、有人飛行を前提に設計されているタイプもあります。予算は保留されているものの、現在ロシアは有していない、45t〜75tのペイロードを運べる能力を持つアンガラ7も計画されています。ロシア国防省が最も期待しているのはアンガラ5であり、これは”プロトン”ロケットを置き換えることになります。最も早く飛行するのは、イタルタスの記事にもあったようにアンガラ1.1で、プレセツク宇宙基地から2013年3月までに、後にボストチヌイ宇宙基地から2014年までに発射されることが計画されています。
コスモス-3M・サイクロン・ロコット→アンガラ1.1/1.2
ゼニット→アンガラ3
プロトン→アンガラ5
(前任者無し)→アンガラ7
という風にそれぞれ代替します。特に軽量の何種類かのロケットをアンガラ1.1/1.2に集約するので効率化を図ることが出来ます。なお、韓国の羅老ロケットにはアンガラの一段目が使用されています。