原潜”セヴェロドヴィンスク”は白海で公試を行う

 RIAノーボスチの記事によると、ロシアの攻撃型原潜”セヴェロドヴィンスク”は白海で二ヶ月間の公試を行うと言うことです(記事)

 「最新鋭多目的原潜”セヴェロドヴィンスク”(プロジェクト885)は海上公試のため二ヶ月間白海へ赴きます。」セヴェロドヴィンスクを設計したマラヒト海洋工学設計局の設計プロジェクト主任V・N・ピャロフは語りました。
 「公試では消磁装置の試験などを行います。この試験で艦は就役前の最終状態に到達します。」彼は続けました。「現在、セヴェロドヴィンスクは98.9%準備が出来ています。長射程巡航ミサイルを含むすべての兵器が公試中完全に機能します。」

 彼が言うには、セヴェロドヴィンスクは今年末までのロシア海軍編入を目指しているとのこと。さらに、セヴェロドヴィンスクを含め6隻のプロジェクト885同型艦/準同型艦(つまり後5隻)の建造が現時点で予定されています。また、生産連合セヴマシュにおいて二番艦”カザン”が建造中でこちらは2015年の就役を予定しています。

 ヤーセン級(プロジェクト885、NATO呼称”グラニー型)はソ連の第4世代原子力潜水艦として1977年に構想され、1985年に正式に計画が認可され、設計はマラヒト海洋工学設計局が行いました。前任者であるアクラ級(プロジェクト971)およびオスカー級(プロジェクト949/949A)の代替を目指した本級は、途中でソ連崩壊及びロシア経済の低迷という洗礼を受け、建造ペースが大幅に低下するというアクシデントに見舞われました。しかしロシア経済の復調などによって2010年6月15日に17年の歳月を経て進水しました。その間の技術革新を取り入れて二番艦の”カザン”は改型の”ヤーセンM”として建造される予定です。

 ヤーセン級の大きな特徴は、従来の攻撃型原潜(SSN)と巡航ミサイル原潜(SSGN)を統合するという点です。ソ連海軍全盛時代は対米空母用の戦略原潜の様な活躍を巡航ミサイル原潜が担っていましたが、アクラ級に巡航ミサイルを搭載して運用してみたところ戦術的にも戦略的にもなかなか良好であり、ソ連崩壊による軍事戦略の変遷がますます巡航ミサイル原潜の活躍を奪ったため予定通り本級は”攻撃型原潜に巡航ミサイル原潜の機能も収めた艦”となり、巡航ミサイル原潜は廃止されました(オスカー級以降の巡航ミサイル原潜は建造されない見通し)。

(↑P-800)
 ヤーセン級では巡航ミサイルはセイルの後ろの専用VLSに搭載されます。VLSは8セル有り、1セルに3発格納され、合計で24発搭載されます。搭載されるミサイルはP-800オニクスで、超音速対艦巡航ミサイルですが限定的な対地攻撃能力も有するとされています。射程は最大で約300km。オスカー級のP-700グラニトなどと同じようにリーダー機のみがレーダーを作動させ、回避機動も取ることが出来るとされています。通常3発まとめて発射されます。

 魚雷発射管は533mmを合計8本、艦体の側面に搭載します(この方式はヴィクター級で検討されたことがあります)。最新のアクラ級などと同様650mm管は装備されません。また、対潜ミサイルとして現用のヴォドパトを置き換える”クラブ”シリーズの1つである91RE1が搭載されます。射程は50km。

 また、原子炉は安全性と信頼性を大幅に向上させ、寿命を艦体とほぼ同等の30年にまで延長することにより就役中の核燃料/原子炉交換を不要とした新型原子炉”KPM”を搭載します。
 ソナーは大型の球状アレイを艦首に搭載(これのせいで魚雷発射管が舷側に)。ソナーシステムは最新のMGK−700「アヤクス」第4世代水中音響総合システムになります。

 推進系は当初黒海艦隊のディーゼル潜”アルローサ”でテストされているポンプジェットが採用されると思われていましたが、実際には通常のスキュードスクリューが装備されました。二番艦以降はポンプジェットになるかもしれません。同世代の戦略原潜”ボレイ”級はポンプジェットを装備しました。
 
 しばらく更新を放棄していましたが、久しぶりに更新しました。その間にミストラル級の売却が決定したり、ブラヴァーの試射がユーリー・ドルゴルーキーから行われたりいろいろ有りましたが、それらについてはスルーしようと思います。
 セヴェロドヴィンスクの話は久しぶりに目にしますが、いよいよ今年就役の可能性が出てきました。ソ連時代に出された最初の構想から実に34年越しでの就役がなるか、見物です。(因みに順調に建造が進んだアメリカの第4世代原潜”ヴァージニア”級は1992年に本格的に計画が始まり2004年10月に1番艦が就役しています)


【諸元】排水量8600(水上)/13800(水中)トン、寸法は全長119メートル、幅13.5メートル、吃水9.4メートル、速力16(水上)/31(水中)ノット、最大潜航深度600メートル、乗員は32人の士官を含む90人。魚雷発射管8(片舷に4)、VLSを8セル(1セルに3基のミサイルを収納)。兵器は深海ホーミング魚雷、ミサイル、機雷を搭載可能。