台湾空軍のF-16A/Bが近代化改修される

 中国軍が殲撃10に代表されるような軍備の近代化を進めているのに対し、台湾は新型F-16アメリカから調達できずF-16A/Bを使っていたり(それでも経国よりはマシか)なんとかアメリカからキッド級を手に入れたりと軍事バランスが次第に中国側に傾きつつある中台関係ですが、流石にアメリカも手をこまねいてるわけにはいかずPAC3だとかブラックホークだとかを解禁したりしていたわけですが、今回は根本的な戦力強化とでも言うべき”F-16A/Bの近代化”が行われることに成りました。

 フォーカス台湾の記事によると、アメリカ政府は台湾が要求している新型F16戦闘機を売却しないかわりに台湾空軍がすでに取得しているF-16A/Bを近代化改修するということを先週の間に担当者を台北に派遣して告げたとのこと。これに対し台湾政府国防部は「そのような情報は入っておらず、新型戦闘機の購入を引き続き希望している」と強調しました。
 アメリ軍需産業筋は「ペンタゴンは近代化改修の内容を台湾当局に説明しているところだ」「F-16C/Dは売却されないが、A/Bを近代化改修することになる」と語っています。さらに彼は決定は今月中に行われると追加しました。

(↑SABR)
 施されるアップデートの主眼はAESAレーダーです。現時点では台湾のF-16は通常のパルス・ドップラー・レーダーであるAPG-66(V)3を搭載していますが、これをノースロップのSABR(Scalable Agile Beam Radar)またはレイセオンRACR(Raytheon Advanced Combat Radar)に換装するとのこと。レーダー以外では、現在台湾空軍が少なくとも48セット保有するECMポッドALQ-184も能力が向上したALQ-184(V)7へアップデートする計画も検討されているそうです。もっとも、ITTがALQ-211を推しているようですが。ITTは台湾にBRU-57も供給するとのことで、このBRU-57は言うなれば一つのハードポイントにぶら下げられる爆弾の数を倍にできるアタッチメントです(F-2スーパー改の模型でもBRU-55か57をハードポイントにぶら下げてましたね)。これにより、例えばF-16には1000lb爆弾を2つしか積めなかったところを4つ積めるようにすると言うわけです。(F-16におけるBRU-57)AIM-9PにかわりAIM-9Xも購入可能となり、近接空対空戦闘能力も強化されます。
エンジンには大幅なアップデートは行われないものの、MilitaryTimesによれば現行のP&W F100-PW-220エンジンをF100-PW-220Eに換装する可能性はあるとのことです。ただ、この換装が戦闘能力に大きな進化を与えるわけではありません。また、コクピットグラスコックピット化されるようです。
 原因は明かされていないもののこのアップデートは台湾空軍に在籍する146機のF-16全てにではなく、一部にしか適用しないそうです。費用に関しては現在不明ですが、レーダーを非AESAのAPG-68(v)9に換装する計画だった2009年時点では42億ドル必要だと見積もられていました。台湾はこれをきっかけにIDF経国の近代化も行いたい考え。

 ロッキード・マーチンはこの事業を閉じつつ有るF-16生産ラインの現状と照らし合わせて「失業者を出さないための対策」と位置づけており、さらにラインの延命を図るため「台湾のF-16C/D生産が来ても大丈夫」という姿勢を見せています。また、この事業が生み出す租税収入は7億6800万にも登るということで、若干複雑な様相を呈しています。

(↑中国の殲撃10)
 判明している今回のF-16アップデート内容をまとめてみると
・レーダー(APG-66(V)3→AESA)
・電子戦関連(ALQ-184→ALQ-184(V)7もしかしたらALQ-211)
・エンジン(P&W F100-PW-220→P&W F100-PW-220E?)
・AIM-9P→AIM-9X
・BRU-57
グラスコックピット
といったところでしょうか。
2009年時点で台湾が計画していた近代化改修の内容のうち
・APG-66(V)3レーダーをAPG-68(V)9に換装
・計器盤に新たにカラー多機能ディスプレイ(CMD)を搭載
・AIM-9Xの運用能力付与(JHMCSについては明記されず)
・新型ECMの採用
と殆どを満たしています。満たしていなかったのはミッションコンピューターの換装ですが、これも明記されていないだけで行われる可能性はあります。JHMCSもサイドワインダー2000ことAIM-9Xを導入する以上、整備すべきですが政治的理由でどうなるものかは分かったものではありません。ま、されるんでしょうけど。
 にしてもこれでAESAを積んだF-16A/Bなどという魔改造機が東アジアに出現・・・・F-16C/DにSABRかRACRを載せる計画は米空軍でも有るんですけどね・・・・。