ロシア国防省はJSCと潜水艦及びキーロフ級近代化の契約を締結した

 ロシア国防省はJSC合同造船会社(JSC United Shipbuilding Corp)と11月9日に7つの契約を締結しました。(flot.com)

(↑ボレイ級1番艦”ユーリー・ドルゴルーキー)
 この契約についてはJSCと国防省が何ヶ月間も議論を重ねてきたもので、契約額は合計2800億ルーブルにものぼります。さらに契約への調印の前にプーチン首相は副首相であるイーゴリ・セーチンセルゲイ・イワノフと国防相アナトリー・セルジュコフを招集して2012年の海軍の構成機器(値段・価格など)についての会議を行う念の入れ用でした。プーチン首相の報道官が言うには「会合は非常に長かった。」とのこと。

 この「円卓会議」の後にJSCと結ばれた契約は7つ。
 それらのほとんどはセヴェロドヴィンスク級攻撃型原潜(プロジェクト885/ヤーセン級)とボレイ級戦略原潜(プロジェクト955/955A)の開発及び建造に関するものでした。新型原潜はルービン海洋工学中央設計局が設計しセヴェロドヴィンスク第402造船所(セヴマシュ)が建造します。ボレイ級は955型と準同型艦の955A型合わせて8隻を建造予定であり現在4隻が起工されています。1隻は既に海上公試中で残り3隻は建造中です。ヤーセン級は第4世代の巡航ミサイル原潜(SSGN)でもあり第七世代の攻撃型原潜(SSN)でもある潜水艦です。こちらは全10隻の建造を予定していますが、1番艦”セヴェロドヴィンスク”は1993年に起工されたという事情もあり、二番艦”カザン”以降はその間の技術発展を取り入れた改良型”ヤーセンM”として建造される予定。

 この他に契約にはアドミラルティ造船所でのプロジェクト21300S潜水艦救助船の建造及びキーロフ級(プロジェクト11442)二番艦”アドミラル・ナヒモフ”の近代化が含まれています。アドミラル・ナヒモフは太平洋艦隊所属の重原子力ロケット巡洋艦ですが、1997年に最後の行動を行なってからは1999年8月14日にセヴェロドヴィンスク市のセヴマシュのドックで核燃料交換を待ち続けて居ました。2002年に一応の近代化と核燃料交換が始められましたが資金難で全く進まず、数年前にふとしたことでキーロフ級復帰が決定するまで現状維持のままでした。現在では本格的なアドミラル・ナヒモフの近代化が行われている筈でしたがロシア海軍の不手際により遅れています。当初アドミラル・ナヒモフは2012年を目処に現役に復帰する予定でしたがそれは不可能です。なお、最配属先は太平洋艦隊となります。
 「(唯一実働部隊にあるキーロフ級の)ピョートル大帝が数年以内に修理に入るのでナヒモフ提督の復帰は不可欠です」太平洋艦隊スポークスマンのアンドレイ・フローロフはいいました。

 JSCのスポークスマンによると、防御省およびUSCは、2012年〜2013年の防衛産業受注を計画する相互の義務の協定に署名したとのこと。「国防省はどんな価格でも受理する準備が整っています。しかしそれは経済的に堅実できちんとした計算に基づいたものであるべきです」セルジュコフの代理人は述べました。「しかし、我々はこの点についてJSCと大きな問題を抱えています。」彼は述べました。もっとも「大きな問題」であった価格については合意を形成できた模様です。副首相のイーゴリ・セーチンは「首相の指示で最近の4か月の間私たちが従事していた契約はすべて調印された」と語りました。そして「最初の契約は来年8月に履行されるだろう」と付け加えました。

 今回の契約は異例のものです。契約額はまさに破格のものであり、JSCには2022年までの仕事を与えたことになります。しかしプーチンは建造中に発生する想定外の費用は全て企業に責任があると釘を挿しました。JSCは2011年中だけでも100億ルーブル以上を受け取る事になる見通し。さらに、今回の契約とは別に、水上艦及び原潜の近代化にロシアは850億〜930億ルーブルを投入する予定。