ブラヴァーの就役は決定されていない

 先日今年最後の斉射を行ったSLBMブラヴァー”ですが、公式には就役は未だ決定していないと12月5日、海軍参謀部の高位の代理人がRIAノーボスチに語りました(flot.com)。

(↑ブラヴァー)
 「ここ最近、いくつかのメディアがロシア海軍司令部の情報を参照する形でブラヴァーの制式採用について報道していますが、採用は未だ正式に決定されていません。12月中にミサイルを採用するかどうかの決断は、最高指揮官によって下されます。」彼は語りました。「現在、海軍はこのミサイルに関する意思決定で問題に直面しています。というのも、ミサイルは次の15年〜20年の戦略戦力を担っていくものだからです。」
 彼は少し前にミサイル試射は2012年に先送りにされたという海軍首脳陣の「決定」が報道されたことに対して驚きを示しました。「ミサイルの採用に関する決定は最高指揮官の権限です。その決定は包括的な海上核戦力を含めた開発政策の方向性を定めます。」
 ロシア海軍には新たな戦略兵器が必要です。「潜水艦”ユーリー・ドルゴルーキー”がこのミサイルを装備すことを我々は確信しています。」スポークスマンは述べました。
 
 潜水艦”ユーリー・ドルゴルーキー”は全ての機器のチェックを終えて、先週セヴェロドヴィンスクの基地に帰投しました。

(↑ボレイ級)
 ブラヴァーの採用については今年中に就役させてしまうか、来年に試射を再度行なってから就役させるかで意見が割れているようです。例えば、以前のノーボスチの報道では「11月末〜12月に試射をもう一度行う」としていましたが国防相アナトーリー・セルジュコフは2012年5月以降に試射を先送りにしてから採用する、と述べています

(↑ボレイ級)
 今後の試射はボレイ級のK-535”ユーリー・ドルゴルーキー”から行われることになるでしょう。タイフーン級1番艦”ドミトリー・ドンスコイ”については既にブラヴァー実験艦としての任務を完了しています(ただしソナーや水中兵器の試験用にしばらく現役に留まるとのこと。他のタイフーン級の処遇は未定)。また、ブラヴァーはボレイ級以前の潜水艦には搭載されないと発表しているので、実戦任務に復帰することもないでしょう。

 ブラヴァーを搭載して実戦任務に就くボレイ級(プロジェクト955/955A)は現在1番艦のK-535 ”ユーリー・ドルゴルーキー”が諸々のミサイル試験などに従事しています。この他二番艦”アレクサンドル・ネフスキー”と三番艦”ウラジーミル・モノマーフ”が建造中です。5番艦、6番艦以降は艦体を延長しミサイル搭載数を増やした”ボレイA”として建造されます。
 5番艦、6番艦は2012年中に建造が開始され、一方で2番艦”アレクサンドル・ネフスキー”は2012年中に就役予定。

 ”ブラヴァー”ミサイルは開発中止となったR-39UTTkh”バルク”の代替としてロシアが開発中のミサイル。ロシア海軍は現在デルタ級に搭載するR-29シリーズのミサイルを近代化して寿命を延長すると共に次世代の戦略戦力であるボレイ級&ブラヴァーを開発中です。ブラヴァーは「弾道ミサイル防衛網を突破する」とほのめかされています。

【諸元】
ボレイ級 計画番号:プロジェクト955 全長:170m(ボレイAでは延長される) 全幅:13.5m 吃水:9.0m 推進:原子炉OK-650Bを二機・蒸気タービンを1機・ディーゼル発電機2基・モーター(4.1MW) 速力:水上15ノット・水中29ノット 最大潜行深度:380〜450m 連続作戦可能日数:100日 乗組員:107人(うち士官55名) 兵装:SLBMブラヴァー”16発(ボレイAでは20発) SS-N-16”ヴォドパト”対潜ミサイル及び魚雷(533mm魚雷発射管を6門)

ブラヴァー ミサイル名:R-30 システム名前:3M14Булава DoD番号:SS-NX-30 重量:36.8トン 全長:11.5m(弾頭含まず)・12.1m(キャニスター含む) 弾体直径:2m(ミサイル)・2.1m(キャニスター) 弾頭:10基(軍縮条約により6基に制限) 推進:固体燃料2段+液体燃料1段 射程:8000km(最大射程約9300km) 誘導:慣性航法及び天測。GLONASSにより弾頭現在位置測定誤差を修正