オスカー級巡航ミサイル原潜は近代化でP-800”オニクス”及び”クラブ”ミサイルを搭載する

 FLOT.PLOMによると、RIAノーボスチは12月12日、上位の軍需産業関係者からの情報として、オスカー級巡航ミサイル原潜(プロジェクト949/949A)が近代化でP-800”オニクス”もしくは”カリブルA”(Калибр-А)が搭載されることになるとのこと。

(↑プロジェクト949A/オスカーII型)
 現在のグラニトを搭載しているスペースに、艦体を再設計すること無くオニクスやカリブルAを収めるのは少し難航したようです。もちろん、ミサイル搭載量も増えています。
 搭載ミサイル変更を含んだ近代化はいつもどおり極東はボリショイ・カーメニ市の原潜修理工場”ズヴェズダ”と、セヴェロドヴィンスクの”ズヴェズダ”で行うとのこと。

(↑水中発射型の”クラブS”)
 なお、”カリブルA”はミサイルそのものではなく、クラブ系列のミサイルを収めるキャニスターのこと。

(↑クルスクから引き上げられたP-700)
 現在、オスカー級はP-700”グラニト”を搭載しています。このミサイルは非常に大型であり、弾頭なしでもその運動エネルギーだけで相当なダメージを与えられそうなほどのサイズです。冷戦期には米空母機動部隊に打撃を与える事を主目的としたソ連巡航ミサイル原潜の一つの到達点でしたが、冷戦が終結した今ではBGM-109B TASM (対艦型トマホーク)同様「長すぎる射程と大きすぎる破壊力」を持つミサイルとして微妙なところです。また、P-700”グラニト”(SS-N-19)そのものも近代化され続けていますが根本的な設計は古く改造にも限界があります。

(↑P-500”バザリト”)
 長射程のP-700は爆撃機やヘリなどによる前進観測手段により目標の諸元を得ておくことが重要です。対水上レーダーやソナーの索敵範囲外までミサイルの射程はあるからです(P-700の場合は900kmもあります)。チャーリー級までの艦に搭載されていた巡航ミサイルは射程はソナーの範囲内に収まっていましたが、米対潜部隊の能力向上に伴い安全性確保のため長射程化されたP-700ではそういうわけには行きませんでした。長射程故に同じ問題を抱える水上発射型の対艦ミサイルP-500”バザリト”(SS-N-12)では、哨戒機やヘリから敵艦の諸元を入手して居ましたが、この方法は敵部隊に哨戒機が接近するという点で危険性を孕んでおり、潜水艦の隠密性を100%発揮できません。そこで、P-700では偵察衛星を用いた全地球情報収集システム”レゲンダ”で敵の諸元を取得しています。このシステムと偵察衛星はP-700の誘導ために作られ、フォークランド紛争ではソ連がレゲンダを用いて英軍の動きをモニターし、次の行動を予測・的中させその有用性を示しています。
 しかし、このようなシステムの運用は非常にコストが嵩むため、P-700を運用していく上での問題でした。これもP-700を艦から下ろす理由の一つでしょう。

(↑P-800の輸出型”ヤホント”)
 P-800(SS-N-26 オニクス)はP-500/P-1000やP-700の様な長射程ミサイルとP-270”モスキート”の様な中・短射程ミサイルを統合する新しいミサイル。推進機関はP-700と同じ固体ロケット・ラムジェット統合推進で、高度2万メートルでの最高速度はマッハ2.5(射程約300km。突入時は低空をマッハ1.6で飛翔)。3基一組で発射され、”リーダー機”であるミサイルが残りの二機を誘導する点などP-700との類似点は多い。対艦ミサイルであるものの、対地攻撃も可能とされている。レーダー受信警戒装置を備え、敵の迎撃に対して回避行動を取ります。クラブ系列のミサイルとは違い完全な「超音速巡航ミサイル」です。

 ”クラブ”ミサイル(SS-N-27 シズラー)は、ひとつの筐体をベースに多様な目的に応じた派生型が存在する巡航ミサイルVLSである3S-14Eや533mm魚雷発射管から運用できる西側で言うところのハープーンやエグゾセのような位置づけのミサイルです。対地型・対艦型・対潜型・空中発射型・超音速突入型(巡航は亜音速・突入は超音速)などがあり、一時物議をかもした”クラブK”もこの系列です。