韓国海軍、独島級揚陸艦の2番艦を導入へ?

 向こうのお国は懐事情が苦しい上に、このきな臭い情勢なので口だけの威嚇(あるいは妄想・勘違い)の可能性もありますが、韓国海軍は以前に計画を凍結していた独島級揚陸艦の2番艦を建造する予定だということ。(U-1速報/TV朝鮮)

(↑”独島艦”の勇姿) 
 独島級2番艦(艦名は恐らく韓国領南端の”馬羅島”)の建造を推進する理由は、日本に対する「劣勢な海軍戦力挽回」のためであり、独島級1隻では「有事時西海で北朝鮮の挑発と東海で独島防御に同時対応が難しいため」で、なぜわざわざ今海軍力挽回を思い立ったのか、というと「無法な振舞い」に出た日本の「独島に対する挑発」を憂慮したからだそうで。「
第2独島艦予算が防衛事業庁の中期計画に含まれた事実」もあり、「予算が中期計画にすでに含まれていて、いつでも導入を前倒しすることができる」とのこと。

(↑米空母の露払いを務める韓国型イージス艦KD-3こと”世宗大王艦”) 
 もともとLPXの名前で建造が計画されていた韓国の新ドック型揚陸艦は3隻を建造してKD-2(李舜臣駆逐艦)やKD-3(世宗大王級イージス艦)といった大型戦闘艦や潜水艦群とともに3個機動艦隊を編成、その旗艦に収まる多目的艦として予定されていました。そのためレーダーなど電子装置類は揚陸艦としてはなかなか高度なものを装備しており、ほぼ同時期に就役したミストラル級の様な運用を想定していると考えられます。

(↑ミストラル級内部)
 ただし、ミストラル級は”強襲揚陸艦”と銘打たれることから想像されるように、16〜35機という強力なヘリコプターの運用能力を持ち、”ドック型揚陸艦”と呼ばれる独島級ではヘリ格納庫に2〜3機+露天甲板に係留分と車両甲板に入れておく分の合計が10〜12機と見積もられており航空機運用能力には大きな隔たりがあります。
 また、独島級の”ヘリ十数機”という数字は先述したように車両甲板や露天甲板に係留した時の推定値であり、それはヘリを多数運用する場合には車両の搭載数を減らさざるをえないことを意味します。現在揚陸艦で運用するヘリを韓国軍は保有していませんが2017年頃までにはKUH/KHP(韓国次期輸送ヘリコプター計画)"スリオン"揚陸艦固有のヘリとして調達する予定であり、そうなるとこの点が問題になる可能性があります。(もっとも、対馬あたりに侵攻するだけならヘリでも無給油で飛んでこれますが。)その点、大きなヘリ格納庫を持つミストラル級では車両搭載量を損なうことなくヘリを運用でき、格納庫での大規模整備も可能です。(ミストラル級内部の模式図
 また、艦隊旗艦として独島級を積極的に運用する韓国海軍では、速度の問題が生じます。
 揚陸艦である独島級は速度はせいぜい23ノット程度であり、護衛する駆逐艦が軒並み30ノット程度出せるのと比べるとどうしようもなく鈍足です。艦隊を組むには速度を遅い艦艇に合わせなければならないため、艦隊の移動速度が独島級に足を引っ張られてしまいます。確かに航空機やミサイルからすれば駆逐艦と独島級の間にある7ノット〜10ノット程度の速度の差など誤差のようなものですが、潜水艦からすれば非常に大きな差です。ディーゼル潜水艦である日本のSSは最高速度は20ノットほどしか出ない上、静粛性を損なう全力疾走は安易にできるものではありません。その様な事情を持つ潜水艦にとって目標の移動速度が遅いことはありがたいことです。

 他にも独島級にはゴールキーパーCIWSとレーダー配置の欠陥問題や後部エレベーターがウェルドックとツライチにならない問題、ウェルドックが満杯になると後部エレベーターを使用できない問題(※)がありますが、これらが修正されるかどうかは韓国の出す予算しだいでしょう。エレベーターがツライチにならない問題は恐らく修正されないでしょう・・・不便ではあるものの大きな支障をきたす程ではないので。(※)については、後部エレベーターがウェルドックに着地する設計なのが原因だと思います。後部エレベーターを下ろした場合、エレベーターは車両甲板とツライチになり、エレベーターに載っている”何か”一旦車両甲板に降りてからスロープでウェルドックに搬入することになっています。記憶がやや曖昧ですが、日本のおおすみ型では後部エレベーターは車両甲板とウェルドックの間に着地し、車両甲板とウェルドックにあるLCACツライチになる設計だったように覚えています。この件に関しては”問題”と言うよりも”仕様”でしょう。


 って言ってもわかりにくいので上の様に図にしてみました。独島級の内部は想像図で、参考にした写真も貼っておきます。上が独島級で下がおおすみ型。赤いのが後部エレベーターで、両者ともにエレベーターの左が車両甲板側で右側がウェルドックです。おおすみ型ではLCACの甲板が後部エレベーターとツライチになります。水陸両用車を運用しない海自ではLCACと後部エレベーターがツライチになればそれでいいのでしょうが(車両をウェルドックに下ろす理由が乏しい)、水陸両用車であるKAAV-7を沖合から直接発進させることもある韓国海軍では直接車両をエレベーターからウェルドックに降ろせたほうが便利なのでこういう構造になっているのでしょう。それでもやはりウェルドックの一部を占有する設計なので問題は問題です。

 まぁ独島級なんて建造してる暇があるなら基礎体力から固めるべきだとは思いますが・・・FFX(韓国次期フリゲート計画。蔚山級や浦項級の後継)から造るかKD-2の稼働率上げたほうが得策でしょうに。KD-3だって維持費も手間もかかるのに大丈夫なんでしょうか・・・。
そういえば、KD-3は喫水の関係で独島を管轄する第1艦隊の母港”東海港”に入港できない問題があった気がするんですが、・・・だったら多分独島級も入港できませんよね・・・港の掘削は実施したのでしょうか?鬱陵島に前進基地を造るなんて言ってたような気もしますがお金は足りるんでしょうか・・・?KD-3も6隻は保有するつもりらしいですし。
韓国が言うには、ひゅうが級DDH2隻に対抗してヘリを持つ独島級を2隻運用すれば海自に匹敵する海軍力になるそうですが、その理屈なら22DDHが就役すれば・・・これも”永遠の10年”の一つなんですかね。