キルギスの空軍基地の使用を20年延長することでロシアとキルギスが合意

 キルギスを訪問中の露プーチン大統領は、キルギスと5億ドル(4億8900万ドル)のキルギスの対露負債の免除と引き換えにロシアの軍事基地の使用期間延長について合意したとのこと。(flot.com
 
 国家元首の面前で署名された、キルギス国内のロシアの軍事基地(カント空軍基地)についての双務協定は2017年から実効化され、以後15年間効力を持ち、5年ごとに更新することができます。
 キルギス国内ではこの件について議論が行われているようです。キルギスのアルマズベク・アタムバエフ大統領は2月に「キルギスのカントにあるロシア軍の基地は土地の借用代も払っていなければ、自らの義務も果たしていない。キルギス国民にとってそのような基地は必要なのか?」と述べていました。借用代は4年間支払われていなかったようです。キルギスはロシアに対して宥和的な方向へ舵を切ったことになります。
 
 flot.comタイトルでは”20年”になっていますが、flot.comの記事では”15年間契約、5年毎に見直し”みたいな趣旨なんですが、とりあえずタイトルが正しいということにしておきましょう。

 キルギスは上の写真の赤く塗りつぶされているところにあります。中央アジアですね。中国と国境を接し、ロシアとの間にはカザフスタンがあります。キルギス独立国家共同体の加盟国です。
 キルギスには米軍の空軍基地(マナス空軍基地)もあり、主にアフガン方面の作戦を担っていますがこちらは2014年以降の使用をキルギス側は拒否しており、ロシアのこの動きはアメリカに対抗したものに見えます。

 今回話題になっている基地は、キルギスの首都ビシュケク近郊にあるカント空軍基地です。

(↑カント空軍基地)
 この基地はキルギス空軍が保有し、ロシア空軍が駐留を許される形で2003年から使用しているようです。独立国家共同体(CIS)の緊急展開部隊の支援が当初の目的です。
 同じくビシュケク近郊にあるマナス国際空港の一部を米軍がマナス空軍基地として利用しています。

(↑マナス空軍基地)
 この基地は2001年の同時多発テロ後のアフガン攻撃のために設置されたもので、2005年の上海協力機構首脳会議でロシアおよび中国の主導で中央アジアから米軍基地を叩きだすことが決定された後も比較的親米的なキルギスは活動を認めていました。しかし2009年にロシアがキルギスに20億ドル以上の支援を発表したことでキルギスは閉鎖を決定しましたが、アフガンを主戦場に設定した米オバマ政権は交渉により、非軍事物資輸送の拠点として”トランジットセンター”を設置することで閉鎖を撤回させました。このトランジットセンターはフランス及びイタリアも使用できます。

 実はこの両基地、こんなに近いところにあります。

 本土の外にあるロシア軍の拠点についての動きで、今回以外にあった大きなものはセヴァストーポリでの黒海艦隊駐留延長ではないでしょうか。2010年の話ですが、ウクライナがロシア黒海艦隊の駐留25年間延長を認め、黒海艦隊は西暦2042年までセヴァストーポリを使用できるようになりました。今回は海軍は無関係で、キルギスに展開するのは空軍ですが、地理的に中国・ロシアの影響圏内にある同国からアメリカが撤退することでより一層ロシアの存在感は高まるでしょう。