米海軍が無人ミサイル艇からのミサイル発射に成功

 Engadget(日本語版)によると、米海軍は海上のドローン兵器(無線操縦無人機)からのミサイルの発射を始初めて行い、成功したとのこと。
 
(↑”Protector”)
 こういった無人艇をメーカーのRafael Advanced Defense Systemsイスラエル)は”USV(unmanned surface vehicle)”と称しており、大きさは恐らく内火艇ほどだと思います。見た目はアメリカのシー・アーク・ドーントレス哨戒艇の上部構造物を取っ払ってそこにミサイル発射機などを据え付けた感じです。いずれにせよ内火艇(7.9m〜11m)ほどのサイズに収まってると思います。客観的な尺度に欠けるのであまり正確な見積ではないと思いますが、内火艇サイズであれば遠方への展開も容易です。
 あ、”無人艇”と言っても、人間が遠隔操作するタイプで、自律行動するわけでは無さそうです。
http://http://www.youtube.com/watch?v=vVfIqGsFRHw 
(↑メーカーPV)
このUSVは”Protector”と銘打たれていますが、この無人艇は少なくともコンセプトにおいては対潜戦闘も含めた多様な任務への対応をアピールしています。しかしサイズから言っても外洋で長期間単独で活動することは不可能ですから、何に使うにせよ沿岸域や母艦の近くに留まることになりそうです。港湾警備や母艦あるいは支援艦の護衛を目的としているのではないでしょうか。
過去にも米海軍は自爆攻撃でUSSコールが損害を被っています。コール襲撃事件のような状況ではいざ襲撃された時に無人艇が有っても効果は限定的でしょうが、ソマリア沖での海賊退治やホルムズ海峡でのイラン海軍との衝突との備えとしては効果的でしょう。ソマリア沖へは、中国海軍も崑崙山級揚陸艦に小型艇を搭載して警備に利用しているようです。

上の無人艇はRafael社純正のシステムですが、米海軍が試射を行った無人艇では機関砲の代わりにミサイル(を装備しており、その他の構造もやや異なっていることから船体はアメリカ独自のもののようです。しかし、ミサイル発射機はRafael製の”Mk-49”を採用しているとのこと。
Mk-49といえばRAMのランチャーであるGMLSと同じ番号が振られていますが、RAMはアメリカとドイツの共同開発でありイスラエルは絡んでいないはずです。しかし、その「共同開発」にランチャーの開発まで含まれているかどうかは不明確で、実際GMLSの製造元を調べてみたものの確定はできませんでした。また、Rafael社は”Spike-LR”という名称で最大射程4km程の「多目的戦術ミサイル」(対戦車ミサイル的な)もラインナップしており(射程2.5kmの”MR”など、いくつかバリエーションがあります)、それが使用されるのかもしれませんし、あるいは対艦型ヘルファイアを装備する可能性もありますし、全く別のミサイルを持ってくることも否めません。
”Precision Engagement Module"と呼ばれるFCSを搭載しているようです。センサー類は主に光学センサーを使用するようです。GPSと慣性航法装置くらいは積んでるでしょうが大掛かりなレーダーは積んでないように見えます。

気になるのは、「海賊相手にミサイルは必要か?」ということです。海賊相手なら機関砲が最適な火器として選ばれるはずです。となれば、イラン海軍などの保有する有人ミサイル艇がターゲットなのでしょうか?ミサイル艇は脅威に対しては脆弱ですが、自身の調達価格に吊り合わないほど大きな被害を敵の主力艦艇に与えることも可能であるため非常にコストパフォーに優れる一面もあります。敵(アメリカ海軍)からすれば虎の子の戦闘艦をミサイル艇の危機に晒すよりは無人ミサイル艇のような部隊を使って駆逐したほうが安全です。ミサイル艇単体での索敵距離はたかが知れているのでさほど長い射程のミサイルに拘る必要もありません。しかし、ミサイル艇に対抗するのに光学センサー主体だとすれば、データリンクを使用できるとはいえ些か探知距離や全天候性に劣る様に感じます。Protectorはレーダーを装備しているようですがやはり米海軍の無人艇も対水上レーダーはそれなりの物を積んでいるのでしょうか。あるいは、対海賊用と対海軍用に別々の無人艇が用意されるのでしょうか。