ロシアはミストラル級にKa-52Kの搭載を計画している

 イズベスチヤの報道によると、ロシアはミストラル級の搭載ヘリとしてKa-52の海軍版を用意する計画があるとのことです。

(↑Ka-52"アリゲーター")
 国防大臣代理のユーリー・ボリソフ氏はProgress Arsenyev Aviation社を訪問中にKa-52"アリゲーター"を陸軍に供給する計画及びその海軍版を供給する計画について述べました。
 2011年に国防省が調印した契約によると、2020年までに国防省は146機のKa-52を受領することになっています。代理人は更に32機のKa-52を"ミストラル"のために購入することを計画しています。「製造工場は146機のKa-52"アリゲーター"を2020年までに供給するという長期契約を請け負っており、更に32機の海軍型Ka-52を32機製造する計画もあります。」ボリソフは取材者に語りました。
 ヘリ空母"ミストラル"は16機のヘリコプターを搭載可能です。従って、Progress Arsenyev Aviation社との新しい契約でミストラル級2隻の航空装備を満たすことが出来ます。ロシア向けミストラル級1番艦"ウラジオストク"は2014年秋にロシアへ引き渡されます。また、2番艦"セヴァストーポリ"は2016年までに海軍が受領します。
 2隻分の航空装備を購入する費用は320億ルーブルであると戦略技術分析センターの専門家であるコンスタンティン・マキエンコ氏が試算しています。2011年に146機のKa-52に関する契約がなされた時は、合計1200億ルーブル以上になると見積もられていました。これはヘリコプター1機あたり8億5000万ルーブルという価格になります。インフレ及びと艦載ヘリコプターの技術データの変更を考慮に入れると、価格はより高騰し1機あたり9億5000万から10億ルーブルになるでしょう。
 Ka-52"アリゲーター"はロシア最新の戦闘ヘリであり、国家防衛命令の枠組みの中で国防省に供給されます。"Helicopters of Russia"の存在は国営武器輸出公社"ロスアバルンエクスポルト"によるヘリコプター輸出の可能性を秘めていると考えられ、Ka-52が国際市場に提供されうるとみなされるとイズベスチヤのスポークスマンは述べています。
 Progress Arsenyev Aviation社はRussian Helicopters社の持株会社で、同社は標準的な偵察攻撃ヘリコプターKa-52やスポーツ航空機Yak-54や"モスキート"対艦ミサイルを取り扱っています。また同社は艦載ヘリコプターKa-52Kと多用途ヘリコプターKa-62についても計画しています。
 "Helicopters of Russia"はOboronprom社(州企業"Rosteh"の一部)の子会社として2007年に設立され、国内のヘリコプター産業企業に複合体となっています。
 2014年3月にフランス外務相ローラン・ファビウスは2011年に交わされた2隻のミストラル級建造の契約について「ロシアとウクライナの衝突により破棄する可能性がある」と述べました。バルト造船所で起工された1番艦のブロックはフランスに送られDCNS社で他のコンポーネントと統合されます。2013年10月に同艦は試験を行い、2014年にロシア海軍へ引き渡される予定です。2番艦の供給は6月にフランスの造船所で同じような作業を行うことを意味しますが、フランスが失敗した場合でもロシアは直ちに自力で作業を完遂することが出来ます。「フランスが作業に失敗した場合は我々自身で同じ船をつくり上げることになります。"ミストラル"の主要部分に関する文書を彼らから得ているのです。もしフランスが契約の履行を拒否しミストラル級の代金を返還した場合、彼らはこの文章に関する権利を失うことになるでしょう。」ロシア国営造船グループ(USC)代表はそう述べました。仮にフランスがミストラル級の供給を拒んだ場合、海軍の興味を惹きつけつつUSCが自力で建造することになります。その契約で2隻の艦が建造されるのでしょうか?ロシアは既に約半額の1.2億ユーロを支払っています。

(↑ミストラル級)

 ロシアはミストラル級の艦載機にKa-52を想定しているようですが、Ka-52は攻撃ヘリであって当然他の種類のヘリコプターも搭載されるはずです。例えば上陸作戦には輸送ヘリコプターによる立体的な輸送が欠かせませんし、艦隊の中核として行動するなら自艦の搭載力を活かして艦隊の対潜ヘリコプターの集中運用を行うことも有るかもしれません。ミストラル級の航空機搭載量はオリジナルで中・大型ヘリコプター16機とされていますので32機のKa-52が調達されれば確かにミストラル級2隻分となりますが、この数字は恐らく訓練・予備機を含んだ調達機数であって実際に1隻に16機のKa-52が搭載されることはないでしょう。ミストラル級搭載用に塩害対策などを施した汎用ヘリコプターが必要になりますが、記事中で紹介されてるKa-62は民生向けのようです。
 Ka-52K"カトレン"は価格が1機あたり9億5000万〜10億ルーブルを見込んでいるということで、日本円で約30億円前後になります。艦載型という切り口から見てみると、日本の最新鋭哨戒ヘリSH-60Kは平成19年度予算で約66億円であり幾分と高価ですがSH-60Kの価格は市場規模を考えれば致し方無いでしょう。艦載型の攻撃ヘリという種別で比較してみると、アメリ海兵隊のAH-1Z"ヴァイパー"はユニットコストが新造機で約31億円(3,100万USドル)であり、Ka-52Kは最新世代の攻撃ヘリとして妥当な値段に収まっていると言えそうです。同機にはオリジナルのKa-52に対して腐食・塩害対策、ローター折りたたみ機構、不時着水に備えた搭乗員防護システム、緊急着水システムを備えています。
 Ka-52KもオリジナルKa-52もロシア海軍哨戒ヘリ伝統?の同軸反転式ローターを装備していますが、Ka-62は通常のローターを装備しています。