ズヴェズドーチカ工場は”世界最速の潜水艦”の解体を完了した

 セヴェロドヴィンスクの修理工場”ズヴェズドーチカ”は歴史上世界最速であり、”金魚”と渾名されたプロジェクト661原子力潜水艦K-222(パパ型巡航ミサイル原潜)の解体を完全に完了しました。

(↑K-222 巡航ミサイル原潜)

                                                                                                                                              • -

"Звездочка" завершила утилизацию самой быстрой в мире подлодки:FLOT PROMより】

 「3月31日、我々の専門家は使用済み核燃料の除去と原子炉の密閉の為の特殊な作業を行いました」とタス通信とズヴェズドーチカの広報部門は発表している。切断された残りの3つの原子炉区画ユニット(原子炉区画1つとその付随区画2つ)は近いうちにコラ半島のサイダ湾に運ばれ、そこにある長期保存施設で保管されることになる。

 以前に”ズヴェズドーチカ”は国営原子力企業ロスアトムとK-222―ソ連の潜水艦として初めてチタン合金で船体が作られた―の再利用に関する契約を交わし、2010年から再利用に関する作業を行ってきた。”ズヴェズドーチカ”の説明どおり、最も困難な作業は使用済み核燃料の除去であった。「K-222の原子炉の設計上の特徴により、他の潜水艦に対して使用されてきた燃料集積体取り出しの為の設備を使用することが出来ず、そのため新たに設計された設備を製造しなければならなかったのです。」と”ズヴェズドーチカ”は語っている。
 2013年3月、”ズヴェズドーチカ”は使用済み核燃料の除去を開始した。「700本以上の核燃料棒を原子炉から特別な輸送コンテナに移動させなければなりませんでした。」2014年12月”ズヴェズドーチカ”は使用済み核燃料を載せた最初の特別列車を送り出し、核燃料はウラルの生産連合体”マヤーク”に再処理と保管を目的に運び込まれた。

 K-222(1978年まではK-162と呼ばれた)はセヴマシュ造船所で1963年に起工され、1970年に北方艦隊に編入された。長期に渡ったその建造期間と高価な建造コストにために”金魚”という渾名が付けられた。1989年に海軍を除籍されている。1970年に潜水艦の水中速度記録としては世界最速の44.7ノットを樹立し、その記録は未だ破られていない。

                                                                                                                                              • -

パパ型巡航ミサイル原潜として知られたK-222は戦力価値の低い第1世代型巡航ミサイル原潜に代わる潜水艦システムの開発を目的にP-70巡航ミサイルを搭載する潜水艦として建造され、船体にソ連海軍の潜水艦として初めてチタン合金を採用するなど凝った作りではありましたが、技術的困難により建造が遅延しているうちにより性能の高いP-120ミサイル(チャーリーII型に搭載)と高価で加工の難しいチタンではなく高張力鋼を使用するチャーリー型巡航ミサイル原潜(プロジェクト670)調達の目処が立ったことにより量産されず、K-162(当時)も部品調達の問題等から実験潜水艦的役割を割り当てられていました。
 1970年には潜水艦の水中速度としては世界最速となる44.7ノットの記録を深度100mで樹立し、その際の原子炉出力は97%でした。また翌1971年には原子炉出力100%での航行を行い、機関の安全の問題からまだ余力を残した状態で高速航行を中止したものの、非公式ながら44.85ノットの速度を記録したとされています。しかしこういった高速航行は塗装の剥離や船体の破損、そして騒音による重大な聴音能力の低下を伴い、当然のことながら水中放射雑音も非常に大きいという問題を抱えていました。
 1980年の燃料棒交換時に発生した1次冷却水漏出事故で原子炉室が汚染され、1984年12月に予備役へ編入となり1989年3月14日には除籍、1999年に海軍旗を降ろしセヴマシュへ引き渡されました。セヴマシュでは2008年から解体が行われ、後に原子炉区画等の処理の為に”ズヴェズドーチカ”へ移動されています。2010年には船体その他の解体が完了し、放射能汚染された3区画を含む原子炉区画ユニットがセヴェロドヴィンスク第27番バース付近で保管されてきました。このため今回の「完全に解体」というのは放射能汚染された原子炉区画から使用済み核燃料を取り出すことに成功し、通常の原子炉再利用プログラムの手順で処理することが可能になったという意味合いでしょう。