改キロ級からの巡航ミサイル攻撃の疑問

 Flot.comより
専門家はロシアの最新鋭潜水艦” ロストフ・ナ・ドヌー”がISILに対して行ったカリブルミサイルの発射について疑問を抱いています。専門家によると、攻撃が行われたとされる日に” ロストフ・ナ・ドヌー”はミサイルをISILが首都と称するラッカに対して発射することは出来なかったはずだということです。
 専門家及びブログ”navy-korabel”の執筆者Александра Шишкинаは” ロストフ・ナ・ドヌー”はクロンシュタットを11月4日に出港し、それ以降は平均約7.5ノットで航行しているのでミサイル攻撃を行ったとされる11月17日にはカリブルの射程外のジブラルタル海峡にたどり着くのが精一杯だと主張しています。Александра Шишкинаは潜水艦の平均航行速度を約7.5ノットと見積り、ミサイル攻撃があったはずの時点で潜水艦は地中海の西の端に居たという推測をしています。しかしこの場合でもラッカまでの距離は2300km以上であり、カリブルの射程外です。
 ” ロストフ・ナ・ドヌー”とほぼ同等の潜水艦であるB-261”ノヴォロシースク”艦長を務めるИгорь Курганов中佐は「もし” ロストフ・ナ・ドヌー”が同じ平均速度で浮上航行していたのであれば、11月17日の朝にジブラルタル海峡に差し掛かったといったところでしょう。そして事実そうであったのならミサイル発射は明らかに不可能です。また、巡航ミサイルの飛行経路の観点からしても極めて遠回りであり不便です。もし” ロストフ・ナ・ドヌー”がディーゼルエンジンではなくバッテリーを使用して潜行したのであったとしても(欧米の偵察衛星に潜水艦が撮影されていないのでその可能性は高い)地中海の西部に到達するのが精々で、カリブルの射程ギリギリの場所です。」と語っています。
 専門家によれば、浮上航行する潜水艦の最高速度は12ノット以下で平均的には7.5〜8.5ノットです。どれくらい速度が出るかは、シーステートやその他の要素に大きく左右されます。潜行した潜水艦の最高速度は19ノットにもなりますが航続距離は400マイルしか無く、それ以上航行するには浮上してバッテリーを充電する必要があります。潜行と浮上を繰り返した場合の平均速度は約15ノットまで落ちます。クロンシュタットを出港した時点で燃料が満タンであっても、しかしこれでは燃料を節約することは実際にはできません。経済航行速度の3ノットを保てば潜水艦は7000マイルの航続距離を得ることが出来ます。
 メディア報道によれば、潜水艦” ロストフ・ナ・ドヌー”は11月17日にISILが首都と称するラッカに対して巡航ミサイル攻撃を行ったとされていますがこれについての公式発表はありません。ただ、” ロストフ・ナ・ドヌー”が11月に補給を受けるためにクロンシュタットに立ち寄り、その際に埠頭の1つは軍によって閉鎖され道路は軍事車両で封鎖されていたというのは注目に値する興味深い出来事です。
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 カスピ小艦隊からのカリブル発射やTu-160・Tu-95SMからの巡航ミサイル攻撃は大々的に発表されているのに対して、行われたとされる潜水艦からのカリブル発射はあくまでも国防省筋の情報としてメディアが伝えているものであり公式発表はされていません。そのため本当に攻撃が有ったのかどうか疑問視されており、簡単な検証を行っているのがこの記事です。ディーゼルエンジンで浮上航行した場合でも水中航行した場合でもカリブルの射程内に” ロストフ・ナ・ドヌー”が到達しえたという確証は得られないと結論づけています。一方でクロンシュタットで補給を受ける際に厳重な警備が敷かれていたというのは興味深いことですが、カリブル自体は平時から積載していた可能性もあるのでクロンシュタットでの補給で新たに積みこんだとは限らないないでしょうし普段の警備体制との違いもあまり良くわからないので判断材料としては微妙なところでしょうか。なお、対地攻撃型カリブルの最大射程は2500kmとされています。