ロシア海軍はロプーチャ級大型揚陸艦を維持する

 RIAノーボスチによると、ショイグ国防相は老朽化するロプーチャ級揚陸艦を維持していく方針を明かしました。
ショイグ国防相は、現在19隻の大型揚陸艦ロシア海軍で処分されようとしていると前置きした上で
「この種の艦船の平均的な寿命は25年以上です。現在、国防省は上陸作戦部隊の機材を更新しており、2015年には大型揚陸艦イワン・グレンと2隻のドック型揚陸艦ウラジオストクとセヴァストーポリ―が完成します。しかし、これらのみでは上陸手段としては不十分でありロプーチャ級のレストアを準備しておくことに注意を払うことが重要です。」と語りました。彼は「少なくとも2隻のロプーチャ級をレストアする予定です。しかし、揚陸艦艇が戦闘において望ましい水準を維持するには船体強化の追加処置が必要となります。」と付け加えました。

(↑ロプーチャ級原型のBDK-14 ”ムフタル・アヴェゾフ”)
 現在のロシア海軍の揚陸戦力の中核をなすのが775型ロプーチャ級大型揚陸艦で、28隻全艦がポーランドで1975〜1991年にかけて建造されました。現在は19隻が就役しており、これら全てが「処分されようとしている」というのは大げさな表現ですがこれから新たな両用戦装備が整えられていけば退役していくこととなるのは間違いありません。しかし、ノーボスチの記事でも取り上げられている新型のイワン・グレン級大型揚陸艦は予定では計5隻が建造されることになっていますが、建造しているヤンタリ造船所のドックの空き具合などから今後の建造の見通しが不透明であり直ちにロプーチャ級の代替となることは出来ません。またミストラル級(ウラジオストク・セヴァストーポリ)は形態としては戦車揚陸艦に近いロプーチャ級の任務をこなす目的の艦船では無い上に排水量や装備からしても求められる任務が異なるの明らかであるためこれをロプーチャ級の代替とすることはやはり不可能です。ミストラル級に関しては導入を推進した前国防相セルジューコフの失脚もありますから、それが今後何かしらの影響をおよぼすことも有るかもしれません。そのため現在の揚陸戦力の維持には既存のロプーチャ級を近代化する必要があると判断したのでしょう。現役最古のロプーチャ級は1976年就役のBDK-182”コンドポガ”で、ショイグ国防相の「平均寿命25年」と照らしあわして考えると既に耐用年数をオーバーしていると言えるでしょう。この25年という平均寿命に達していない艦は少なく、あくまでも”平均”なのである程度幅を取って年数27年以下(1987年以降に建造)艦をピックアップすると9隻と全体の半分程度です。残りの艦は概ね寿命に到達していると考えられるので、今後も使用し続けるのであれば西側でいうところのFRAMのような艦齢の延長を含めた全体的な装備の近代化が必要となるでしょう。あまりに古い艦はそのまま寿命が来るまで使用するにしても、原型の775型である程度の艦齢に達している艦から近代化を実施していくのではないでしょうか。