インド空母”ヴィクラマーディティヤ”は白海での海上試験を終えた

 イタル・タス通信によるとインド海軍の航空母艦”ヴィクラマーディティヤ”(旧”アドミラル・ゴルシコフ”)は行われていた海上試験を成功裏に終えたとのこと。

(↑ソ連海軍時代の”ヴィクラマーディティヤ”) 
 改造を担当しているセヴマシュによると”6月8日に開始された海上試験においてヴィクラマーディティヤは要求された以上の性能を発揮した”とのこと。
 今回の海上試験では試験運転を担当するロシア海軍の乗組員とインド海軍の要員が乗り組んでいました。
 また、情報筋によると、現在試験を終えたヴィクラマーディティヤが燃料や水・食料の補給を完了した後、白海からバレンツ海へ進出しそこでMiG-29Kを使用した発着艦試験を行うということです。
 以前にセヴマシュのスポークスマンが語ったところによると、すべての試験を消化するのに124日間かかると予定されているそうです。
 

(↑キエフ級) 
 ヘリ・VTOL機の運用を担うキエフ級4番艦だった”アドミラル・ゴルシコフ”(改名前は”バクー”)を大幅に改造し通常型の艦載機をスキージャンプにより発艦させるSTOBAR式に改造してインドに売却し、そのインドでの艦名が”ヴィクラマーディティヤ”です。
 レーダーやソナーなどのセンサー群は一掃され、対空用の3次元レーダーMR-700及びMR-760などを代わりに装備します。(ソナーはオミットされた)また、全通式甲板を搭載する都合上、キエフ級で艦橋の前方に装備されていた兵装は全て取り外され、結果兵装はコーチク複合CIWSの輸出型の”カシュタン”を3基のみと一般的な空母のそれに準じるものになりました。
 大幅な改造が施されたものの、印露間の交渉の結果、船体はタダである代わりに改造費及び艦載機のMiG-29Kの代金として合計約15億ドル(改造費は約9.7億ドル、MiG-29Kは約5.2億ドル)をインドが払うということで落ち着きました。
 中古とはいえ9億ドル価格は破格で、単純比較はできないものの例えば排水量ではヴィクラマーディティヤの約半分となる日本のDDH”ひゅうが”は建造費が1057億円となっています。この価格は、インドがTu-22Mの購入やインドへリースされたアクラ級のネルパ建造費用などを負担することと引換の条件だったと見られています。

 しかし、1990年代の火災の影響やスキージャンプ設置の問題で作業は遅れ、また費用も上乗せされました。これに関してはセヴマシュ側は大型水上艦建造の経験不足による作業の遅れ・見積の誤りを理由にあげています。
 結果として空母本体は23億ドル、MiG-29Kはユニットコストが4,625万USドルと言われています。
 
(↑MiG-29K)
 ヴィクラマーディティヤでも艦載機として運用されるMiG-29K«9.41»は、既に2009年12月にインドへ納入が開始され最初の飛行隊を結成し2010年2月から運用を開始し、第303飛行隊。
 ロシア海軍でもSu-33の後継機として装備されることになっていますが、先日行われたアドミラル・クズネツォフの遠征で発着艦試験を行いました。
 MiG-29Kはマルチロール化されており、当初は空対空任務を主としたSu-33とは異なり、改装を施すことなく多様な兵装を運用可能です。ハードポイントも9箇所用意されており、運搬能力は充実しています。
 しかし一方で、結局固定翼の艦載AEWであるYak-44がソ連・ロシアではキャンセルされたため早期警戒任務は回転翼のKa-31にインド・ロシアともに頼らざるを得ず、早期警戒能力(既にレーダーピケット機の範疇を超えてAWACS級の能力を持つと言われることもあるが、さすがに探知能力においてはAWACSに劣ると思われる)や特に滞空時間が不安要素となります。いずれにせよロシアが計画中の原子力空母を中心とした艦隊が整備されるまでには固定翼のAEWかKa-31の後継機・発展型が製造されることになるでしょう。